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トランプ王朝の内幕 リベラル層が忌み嫌う男が、大統領になった「意味」=特別寄稿・内田樹

2016年12月 4日号

 ◇絶望への「パンドラの箱」が開いたのか?

 トランプ大統領の登場はイギリスのEU離脱、欧米での極右勢力の台頭と同じく、「国際協調から自国益第一主義へ・グローバルからローカルへ」という世界史的な転換が起きていることを語っている。ただ、今起きているのは明確な目標を持った行動ではなく、むしろ単なる思考停止である。前代未聞の事態が地球的なスケールで起きているのだが、「前代未聞」である以上、何が起きているのかを適切に記述し対処することができない。だから、目を閉じ、耳を塞いで、思考停止のうちでつかのまの安穏を人々は手に入れようとしているのだ。
 ここで言う「前代未聞の事態」とは、経済のグローバル化の規模と速度がついに生体の受忍限度を超えたということである。ウェストファリア条約以後、国民国家が基礎的な政治単位である時代が350年ほど続いた。国民国家というのは、国土を持ち、官僚と軍隊を備え、同一言語、同一宗教、同一の生活文化を共有する国民たちがそこに集住しているという擬制である。私たちにとって、国民国家は「あって当たり前」のものであるけれど、それが歴史的に形成された制度である以上、環境が変わればかたちを変えるし、消滅することもある。
 国民国家は他国との差異化によってそのアイデンティティーを基礎づけてきた。だから、国境を越えると言語が違い、通貨が違い、度量衡が違い、法律が違ったのである。それが自他を隔てる「障壁」として機能していた。けれども、経済のグローバル化は資本・商品・人・情報がいかなる障壁をも乗り越えて、自由かつ高速度に流通する状態をめざす。だから、あらゆる障壁は除去されねばならない。グローバル化の進行につれて国民国家の解体が急激に進行したのは当然だったのである。

 ◇米国にある「アンチグローバル」の反撃

 一国主義と排外主義を掲げたトランプ登場はこの国民国家の解体に強い危機感を抱いた人々からの「アンチグローバル」の反撃と見なすことができる。だからこそ支持者たちは何よりもまず「障壁の再建」を求めたのである。「メキシコとの国境に壁を築く」「イスラーム教徒の入国を認めない」といったトランプの公約はアメリカ国民の「障壁再建」願望をわかりやすく絵画的に表象したものである。同じ文脈で、非白人の排斥、性的マイノリティーへの迫害などがアメリカではこれから強まるだろう。そして、

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