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青い空白い雲
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安倍首相"史上最長"を可能にした「検察の不正義」

2019年12月 1日号

牧太郎の青い空白い雲/744

「意外にも」と言うべきか、「不運にも」と言うべきなのか、安倍晋三首相の通算在任日数が11月20日、憲政史上最長を記録する。

 大臣たちの不祥事などで、第1次政権を投げ出した「あの時」とは、想像もできない「安倍政権の長寿」である。

 それなりに「人気」もある。しかし「バカの一つ覚え」のように主張する「デフレからの脱却」は早々と頓挫。経済は長〜い停滞。所得格差が広がっている。

 貧乏国なのに、後進国にカネをばらまき、トランプ大統領の命令で「兵器爆買い」までしているのに、当のアメリカにも、ロシアにも、中国にも(「世界中から」と言ってよいほど)バカにされ、外交は「合格点」にほど遠い。

 その上、次々に起こる災害に何ら〝打つ手〟がない。

 なのに〝長持ち〟する。なぜだろう?

「長寿の秘密」を探すのはいとも簡単である。

 次々に不祥事が続く内閣だが、この8年間、国会議員は逮捕・起訴されていない。どれも立件されれば「政権の命運」が尽きるような大事件なのに、なぜか、検察は〝真っ黒けの悪党〟を無罪放免にしている。

 つまり、検察を味方にしたから安倍内閣は生き延びているのだ。

    ×  ×  ×

 逮捕されるべき国会議員はいた。例えば「甘利明・元経済再生担当相」である。甘利氏と元秘書2人は2013〜14年、千葉県の道路工事の用地をめぐり、工事を担う都市再生機構(UR)との間で補償交渉をしていた千葉県の建設業者から現金計600万円を受け取っていた。

 当方から見れば「ワイロ」である。正確には「あっせん利得処罰法違反」である。業者は「600万円は口利きの報酬だった」と正直に証言したが、東京地検は甘利氏の「政治資金としてきちんと処理するように指示した」という言い訳を認め、甘利氏と元秘書2人を不起訴処分(容疑不十分)にした。

 法務省の幹部が「口利きなんて常時、永田町界隈(かいわい)でやっていること」と、政権側に立って「捜査」に口をはさんだ!と雑誌などで批判されたが......その「不起訴」で安倍政権は助かった。

 下村博文・元文部科学相の政治団体「博友会」が学校法人「加計(かけ)学園」の秘書室長から政治資金パーティーの費用として200万円を受け取ったことを隠していた。これも捜査対象になったが、東京地検特捜部は不起訴処分とした。

「検察の正義」はどこへ行ってしまったのか?

    ×  ×  ×

「検察の正義」は風化した。「検察の独立」を守っていた人々が......文字通り「身体(からだ)を張って」守っていた検事たちが、突然「時の内閣の意向」を忖度(そんたく)する〝普通のお役人〟になってしまった。

 多分、原因は「人事」だろう。

「政治主導」という名目で、安倍政権は、霞が関の官僚群を「人事」で支配した。各省庁の局長級以上の幹部候補を官邸がリストアップ。各省庁の人事にことごとく介入。首相(官邸)が最終決定する。

 法務省も例外ではなかった。

 検察首脳人事は政治的中立の不文律から、政権の影響を排除した独自の序列で決める。例えば、国民の安心・安全を担う検察の顔「検事総長」選びは現職の検事総長が総長OBらの意見を聞きながら次の検事総長候補を最終決定する。

 ところが、安倍政権は違っていた。16年7月、当時の法務事務次官が、後任の事務次官の人事原案の承認を官邸に求めたところ、官邸はそれを拒否。原案では、地方の検事長に転出させることになっていた「安倍寄りの人物」を事務次官にした(事務次官は検事長を経て検事総長、というケースが多い)。

 安倍政権は「独立性」が求められるはずの「検察人事」を手に入れた。検察は、この日から「安倍政権の言いなり」なった。

    ×  ×  ×

 安倍政権は検察人事を握ることで長期政権を手に入れ、結果として「悪が栄える世の中」を作った。その最たるものが「森友学園への国有地不当廉売」事件である。

 いまさら、説明することもないだろう。大阪地検特捜部は国有地の大幅値引き売却に対する背任や決裁文書を改ざんした虚偽有印公文書作成など全ての容疑について、財務省幹部ら38人全員を不起訴処分とした。

 改ざんを命令された職員は悩み続け、自殺したというのに......命令した財務省理財局長(当時)・佐川宣寿(のぶひさ)氏は嫌疑不十分!

「巨悪」に立ち向かうハズの検察が自ら「巨悪」になってしまったのだ。

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