コラム詳細

青い空白い雲
loading...

「検査疲れ」の75歳は"医療費無駄遣い"を恥じている

2019年11月 3日号

牧太郎の青い空白い雲/740 

 個人的な話題で恐縮だが、最近「検査疲れ」である。

 月に1度は「検査」のために医療機関に行く。予約券を見ると、11月は......某日「心エコー検査(心臓超音波検査)」。某日は「採血」「採尿」。糖尿病なので、2カ月に1回の「決まりもの」だ。

 12月は......MRI(磁気共鳴画像)検査。膵臓(すいぞう)に「嚢胞(のうほう)」がある。この袋が「膵がん」に変化することがあるらしい。膵臓は体の奥にあって、通常の検査では見つけにくい。発症から5年後に生きている確率は5%以下? 「嚢胞の変化を見ておかないとヤバイ!」と消化器科の医師が言うので、年に2回、MRI検査をしている。一度「超音波内視鏡」検査もやったことがある。

 まだまだある。3年半前「肺がん」の手術をしてもらった別の病院で、年末、「他の臓器に転移していないか?」を調べるCT(コンピューター断層撮影)検査。1週間後のクリスマスイブに、ビクビクして「結果」を聞きに行く。

 まるで「検査のデパート」じゃないか(笑)。

 10月10日、75歳になった。「だから」とは言わないが、ちょっぴり「検査疲れ」である。

    ×  ×  ×

 それに「検査」にはカネが掛かる。後期高齢者医療制度に移行しても、年収約370万円以上の「現役並み所得」があるので、窓口で負担する医療費は3割負担。結構、馬鹿にならない。

 でも、もっと心配なのは「国の医療費」である。当方のような「検査漬け?」「薬漬け?」を抱え、国の台所は火の車? 国の医療費は約42兆円(2017年度)。40年には約67兆円になるという。

 医療費が増える原因は「長生き」だろう。(もちろん、C型肝炎の特効薬「ハーボニー」、がん治療薬の「オプジーボ」など、保険適用される高額薬剤が年々増えていることも大きな原因だが)医療費増加分の約7割は「75歳以上医療費の増加」なのだ。

 親戚に「人工透析患者」がいる。腎不全になった患者が週に3回、血液の老廃物を人工的に除去するのが「人工透析」。80代の親戚は「辛(つら)い!」と嘆いているが「止(や)めると死ぬ」と言われ、我慢している。気の毒である。

 ここでもカネが大問題だ。日本には約33万人も透析患者がいる。しかも、年間約5000人のペースで増加している。この透析患者1人に対して、国は年間約500万円を負担している。

 単純計算で約1兆6500億円。合併症も起こすことが多いので、その分も含めれば、ざっと2兆円が人工透析に使われている。国の医療費のザッと5%が人工透析に使われているのだ。

 命を守るのが医療の役目である......が、うがった見方をすれば、医療機関にとって、一度透析を始めた患者は「定期的な収入源」だろう。製薬会社にとっても「透析患者」はドル箱なのだ。

 医療機関が透析の技術料として受け取る「人工腎臓点数」は以前より減点されてはいるが「2100点(1日につき4時間以上5時間未満透析を行った場合)」(1点は10円)。確実に儲(もう)かるビジネスではあるまいか?

「検査漬け」「薬漬け」「人工透析」......ひょっとすると、この中には"無駄遣い"が紛れ込んでいるかもしれない。

 どんな世界にも「利権」が存在する。医療の現場にも「数々の利権」が渦巻いているだろう。でも、少子高齢化で、ますます財政状況は悪化する。何とかしなければ日本の医療は破滅するだろう。

 患者の分際で、偉そうなことを言うようだが、医療関係者は「袋小路」に迷い込んでいることに気づいていない。

    ×  ×  ×

 スーパー台風19号が傷痕を残した。大河が次々に氾濫した。

 何か、列島が、いやいや世界が急変したような気がする。地球温暖化をとめないと、気候変動で人類が滅亡する!そんな「不気味さ」を感じる。

 テレビは判で押したように、「少しでも命が助かる可能性のある行動を取ってください!」と甲高い声で"命令"している。

 確かに、今まで経験したことがない事態なのだろう。でも、真っ暗闇で、音をたて氾濫する大河を前に何をしたらいいのか?

 何とも、テレビは白々しい。

 医療関係者も同じじゃないか?「少しでも命が助かる可能性のある行動を取ってください!」と患者に"命令"しているが、果たして「検査」「投薬」が最善なのか?

 地球が変わる!と言うのに......贅沢(ぜいたく)に医療費を使っていいのだろうか?

 医療現場に薄々「利権」を感じている「75歳」は大いに悩んでいる。

政治・社会

くらし・健康

国際

スポーツ・芸能

対談

  • 艶もたけなわ

    小堀鴎一郎 医師

    2019年11月 3日号

    阿木燿子の艶もたけなわ/274  「人生の最期を迎える場所は?」と聞かれたら、多くの...

コラム