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青い空白い雲
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危うい「MMT」理論を信じて五輪マンションを買う人?

2019年6月 2日号

牧太郎の青い空白い雲/719 

 マンション市場には「初月契約率」という言葉がある。その月に初めて売り出した物件がどれくらい売れたか?という割合である。
 新築マンションのパンフレットには必ず「第○期○次」というような表示がある。これにはちょっとした「工夫」があって、初めに売り出す時に10戸程度しか購入申し込みが入らない?と予想すると、業者は「第1期1次」の販売を「10戸」に設定する。その10戸に申し込みが入ると「第1期1次登録申込 即日完売」と広告に書く。総戸数が200、300の大マンションで10戸しか契約できなかったら、不人気物件!と思うが......表向きは「即日完売」。さらに第1期2次を「5戸」に設定して「第1期1次・2次連続即日完売」とうたう。
 まあ、イロイロな「工夫」をして、業者は「初月契約率」を上げようとする。「売り出し」は建設前か建設中。建物が竣工(しゅんこう)した後も販売が続いていると、業界では「完成在庫」と呼び、販売不振!のレッテルが貼られる。だから「初月契約率」は大事なのだ。
 実は、年の始め、不動産経済研究所が昨年12月の首都圏マンション市場の「初月契約率は49・4%。1991年8月以来の50%割れ」と公表した。衝撃だった。マンション市場の好不調の目安は70%。「不動産バブルも崩壊するのではないか?」。業界はかなり動揺した。
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 折も折、2020年東京五輪・パラリンピックの選手村が大会後、改築され、販売されるマンション群「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」のモデルルームが公開された。4月末に始まり、1日の見学者が約100組。大変な人気だ。約18ヘクタールの土地に4145戸の分譲と1487戸の賃貸マンションができる。小・中学校や保育施設、商業施設が整備され、新たに人口約1万2000人の住宅地が誕生するという。
 この土地の一部は、もともと都有地。"破格の値引き"が行われた!とささやかれているが、むしろ「この疑惑」が人気の秘密?「土地代が値引きされれば、価格が安いはず」とみる向きが多いのだろう。ともかく大人気だ。
 価格は5000万円台から1億円台。坪単価にして270万円から280万円。銀座まで約2キロの都心で「坪単価270万円」はめっぽう安い。
 問題は交通の便だ。最寄り駅は現在、都営大江戸線の「勝どき駅」。遠い。バス高速輸送システムで虎ノ門、新橋といった都心と晴海を結ぶ計画もあるとは聞いたが......まだ決まっていない。
 五輪マンションは果たして「買い得」なのか? 発売は7月下旬。「初月契約率」はどうなるか?
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 今、業界は意見が分かれている。「早晩、不動産バブル崩壊」と見る向きもいれば「五輪マンション人気でバルブ状態は続く」と断言する人もいる。
「MMT」という言葉をご存じだろうか?
「Modern Monetary Theory」。今、アメリカで話題の現代金融理論である。
 簡単に言えば「自国通貨建ての借金(財政赤字)は、紙幣を印刷すれば返せるのだから巨額であっても構わない」という"めちゃくちゃな理論"。これまで「財政赤字、政府の借金が膨らむことは、さまざまな問題を引き起こすので悪いことだ」というのが常識的な経済学理論だったが、MMTはこれに真っ向から反論している。
 この「めちゃくちゃ理論」が日本でも飛び出したのは、景気が減速している中で、金融政策が手詰まりな状況。「財政拡張政策」で活路を見いだそうとする一部の政治家・学者が言い出したのだろう。
 もし「MMT」が正しければ、10月の消費増税なんて必要ない!増税より借金!「強気な見通し」を主張する背景には「MMT」が存在する。
   ×   ×   ×
 神経を尖(とが)らせるのは財務省である。彼らの悲願は、消費増税を何がなんでも実施すること。
 世界の経済情勢は先行き不安。それでも、消費増税を実施しようとしているのに......「MMT」は敵である。
 まあ、財務省を応援するつもりはないが、財政赤字が野放図に拡大すればインフレになる。財政赤字の拡大はいずれ民間貯蓄の不足を招き、金利を高騰させるだろう。「MMT」の言い分はインチキだと僕は思う。
 しかし、日本人の大半が「今、消費増税が行われれば日本経済は沈没する」と心配している。だから「MMT」のような「手品」が登場するのだ。
 今からでも遅くない。消費増税は凍結すべきだ!

 

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