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青い空白い雲
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平成とはーー低姿勢・低リスク・低○○が「孤立」を生んだ

2019年4月21日号

牧太郎の青い空白い雲/714 

「昭和」の頃「3K」という言葉が流行(はや)った。「キツイ」「キタナイ」「キケン」......それぞれの頭文字「K」を並べて、メディアは「過酷な労働環境」を報じた。

 別の「3K」もあった。ここでの「K」とは「高(こう)」。若い女性が憧れる理想の相手は「高身長」「高学歴」「高収入」だった。その背景にはバブル景気があったとは思うが「高」は善だった。
 ところが「平成」は違った。Kではなくって「T」? 「低」の時代なのだ。例えば「低姿勢」である。夫婦間だけでなく、ご近所付き合いでも、職場でも「腰を低くする」。まかり間違って、高圧的なセリフを吐き、セクハラだ! パワハラだ!なんて言われたらおしまい。「力強さ」は敬遠され「優しい・丁寧」が高い評価を得る。「低」が善......なのだ。
 例えば「低リスク」である。「平成」は想定外のことが次々に起こった。大災害。先が見えない。大企業に就職しても安泰ではない。そこで「低リスク」の公務員が超人気になった。「低リスク」だから、もちろん「キツイ、キタナイ、キケン」なんて、ヤバイ仕事はやらない。
「低依存」というのもあるらしい。家事や育児を任せていると相棒からは嫌われる。まして「大きな子供」のように振る舞って、何から何まで、相棒に任せていると離婚される。妻に頼らず、自分のことは自分でする「低依存」の男性がモテるのだ。
    ×  ×  ×
 一番、深刻なのは「低支出」である。不景気で収入はなかなか上がらない。世の男性はギャンブル、外食、趣味に回すカネを家計に回す。生きるためには仕方ない。「低支出」の原因は「低所得」。「昭和」の新入社員は「いずれは年収1000万円」を目標にしたが、「平成」の新入社員の希望は「現状維持の400万円程度」。夢がない。
 要するに、何から何まで「低」なのだ。
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「平成」とは、どんな時代だったのか? 答えはいくつもあるが「低の悪循環」もその一つだろう。人間「低い生き方」を選べば「付き合い」が消極的になる。結婚なんて面倒くさい。友達も出来ない。孤独である。社会的に「孤立」する。
 ここ数年「恨みつらみなく、相手を不条理に殺してしまう事件」が次々に起こった。 法務省の「無差別殺傷事犯に関する研究」によると、その特徴は......調査対象52人中51人が男性。年齢は20~39歳が中心で、65歳以上は一人もいない。すべて単独犯で、共犯者はいない。要するに「孤独な若者」である。
 犯行を起こした時、彼らは経済的に困窮。助けてくれる友達はいない。家族関係が劣悪。4割が異性経験がなかった。孤立した若者が無差別殺人を犯し「誰でもよかった」と供述する。"孤立殺人"の時代である。
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 孤立するのは若者だけではない。中年も「孤立」する。
 内閣府の調査によると、40~64歳で、ひきこもり状態にある人は全国で推計61万人。「ひきこもり」と言えば、若い人の顔が思い浮かぶが、実は「中年」の方が多い。
 40代に「ひきこもり」が増えた原因は「平成」中期(2000年前後)の「就職氷河期」にあるけれど、ともかく「ひきこもり」は"究極の低さ"にある。
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 高齢者も「孤立」している。内閣府の高齢社会白書(2018年版)によると、2015年に65歳以上の男性192万人、女性400万人が一人暮らし。40年には男性355万人、女性は540万人が一人暮らしになるらしい。
「一人は気楽でいい」なんて強がっていても、誰とも話さない日が続くと、生きる気力がなくなるのも事実だ。
 最近、一人暮らしのお年寄りの自宅に学生が下宿する「異世代ホームシェア」が注目されているようだが、果たして成功するだろうか?
「低」に慣れた「平成」の人々は(一部ではあるが)「孤立」の淵(ふち)に追いやられている。

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