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青い空白い雲
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「光文」事件のような「新元号○○」お手柄合戦?

2019年3月31日号

牧太郎の青い空白い雲/711 

 大正15(1926)年12月25日早朝、東京・有楽町界隈(かいわい)に配られた東京日日新聞(現・毎日新聞)の号外には「聖上崩御」の黒枠見出し。「天皇陛下には廿五日午前一時二十五分、崩御あらせられたる旨宮内省から発表された」と報じた。葉山の御用邸で、ご療養中の大正天皇が亡くなられた。
 そして問題になったのは、もう一つの見出し「元号は『光文』 枢密院に御諮詢」である。「元号制定に関しては枢密院に御諮詢あり同院において慎重審議の結果『光文』『大治』『弘文』等の諸案中左の如く決定するであらう 『光文』」とある。大スクープだった。
 ところが、である。実際には新元号は『昭和』だった。東京日日新聞は同日付で号外第2号を出し「元号は『昭和』 本日詔書発表」と訂正する。世に言う「元号『光文』誤報事件」である。なぜ、こんなことが起こったのか?
 元号が「光文」となっている東京日日新聞の号外を見て政府は驚く。「新元号」が特定の新聞社に漏れていた。具合が悪い。そこで「かつて弘文天皇がいらっしゃった。この天皇は天武天皇との政争に敗れ、首を吊(つ)って、最後を迎えられた。その『弘文』と字は違うものの、同じ音では縁起が悪い」という妙ちきりんな理由をつけて、急遽(きゅうきょ)「昭和」に取り替えた。(中島利一郎・元宮内省臨時帝室編修局編修官補の証言など)
 かくて、世紀の大スクープは「前代未聞の大誤報」になってしまった。
    ×  ×  ×
 新元号は極秘である。極秘だからこそ、記者は「抜きたい」と思う。事実「大正」の時は朝日新聞がスッパ抜き、「平成」の時は、毎日新聞が小渕恵三官房長官の発表前に新元号をキャッチして、他の新聞より一版早く報道した。
 今回も4月1日の発表を前に熾烈(しれつ)な取材合戦が繰り広げられているのだろう。安倍晋三首相周辺は「絶対、漏れない。漏れたら、別の元号に差し替える」と牽制(けんせい)しているようだが、どうだろうか?
 お上に忖度(そんたく)して「安倍首相のお気に入り」のメディアに「新元号」を漏らす人物が現れてもおかしくないが......聞くところによると、「新元号」を管理する中心人物「官房副長官補」は裁判官の家に育ち、自分から政治的に立ち回るタイプではなく「政治的漏洩はあり得ない!」という見方が強いけれど......。
    ×  ×  ×
 新元号を巡る「お手柄争い」はメディアの取材合戦だけではない。誰が新元号を発表するか?という超政治的判断に絡んで「お手柄争い」が起こっている。
 竹下登政権下の「平成」の時は、小渕恵三官房長官が発表。その映像がテレビで何度も流れ、子供たちの間で「平成のおじさん」というニックネームがつけられた。
 竹下さんは「僕が発表すれば良かった」と冗談めかして笑っていたが、生前、こうも話している。
「元号は昭和39(1964)年私が官房副長官の時、佐藤栄作首相から『純粋な手続きとして考えるように』と言われ、何人かの学者に候補を頂き、官房長官室の金庫にしまっておいた。私の内閣で改元ということになり候補の中から僕が『平成』を選ばせてもらった」(平成2年1月17日、兵庫県の地方遊説で)
 新元号は、佐藤・竹下の保守本流が四半世紀前から準備していた!「平成おじさん」は竹下登だ!と言いたかったのかもしれない。
 新元号は約10ぐらいの候補に絞られていると聞いた。その中から最終的に安倍さんが選ぶ。だから「自分で発表したい」と思うのは当然である。
 しかし、今や霞が関で「安倍一強ではなくて菅(すが)一強じゃないか?」と囁(ささや)かれる超実力官房長官はどう思っているのだろうか?
 そこで、両者が納得する「やり方」を考えている知恵者が登場する。あくまでも「例えば」であるが......安倍さんが自ら「新元号」の字を毛筆で書き、記者会見で、その台紙を菅さんが披露する。
 これなら「安倍・菅二強」が維持されたことになる。
 あっぱれ! あっぱれ!
 これは「○○元年・最初のお手柄」になるのではないか(笑)。

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