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青い空白い雲
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津波を「震災」、国防軍を「自衛隊」と呼ぶ"名称の半嘘"

2019年3月10日号

牧太郎の青い空白い雲/708 

 今年も「3・11」がやって来る。死者1万5897人の犠牲者を出した東日本大震災から8年。平成最後の年の3月11日、テレビは一日中(今まで以上に)あの「悪夢の津波」を流し続けるのだろう。
 実は......あの映像を見るたびに「東日本大震災」という名称に違和感を持ってしまう。一瞬のうちに人々をのみ込んだ、どうしようもない「大津波」の映像なのに、テレビの下の字幕はいつも「東日本大震災」である。ごく普通に考えれば、これは地震ではなく「大津波」なのだ。
「震災」と名付けるのは(地震が原因だから)「大嘘(うそ)」ではないけれど「半分、嘘」ではあるまいか? 震災から1年間に収容された死者1万5786人のうち、90%以上の1万4308人が津波による溺死だ。死傷者を一番、多く出した原因を災害名にすべきではあるまいか?
 後世に、大災害の教訓を正確に伝えるためであれば、「東日本大震災」ではなくて「東日本大津波」と呼ぶべきだ。
    ×  ×  ×
 当方と同じように「大震災」という名前に疑問を持つ人がいた。
 毎日新聞の同僚記者だった渡辺直喜氏が毎日OBの同人誌「ゆうLUCKペン」に「『2011東日本大津波』に名称変更を提案します」という一文を寄せている。この一文によると、渡辺さんは昨年10月、「東日本大震災」の命名の経緯を気象庁(国土交通省の外局)に電話で聞いたらしい。係官は「それは総務省の管轄だ」という。そこで、今度は総務省消防庁に電話すると「内閣官房で東日本大震災と決め、閣議に上げたと聞いた」という。で、内閣官房に聞くと「7年前のことで、はっきりしない」。
 要するに、誰も「名称決定の経緯」を明らかにしないのだ。お役人たちは、なぜ、こんな簡単なことを隠すのか?
 そんなにビクビクする必要はない。渡辺さんは「大震災」より「大津波」がいいんじゃないか!と言っているだけなのに。
    ×  ×  ×
 こんな笑い話がある。
〈あるビジネスマンが日本人のボスに言った。
「私は3人分の仕事しています。給料をもっと上げてください」
 すると日本人ボスが答えた。
「給料については検討する。だが、その前にキミは誰と誰の分を余計に働いているんだ。まず、その2人をクビにしよう」〉
 つい、笑ってしまった。日本人は「ずる賢い」!というジョークである。名称の「半嘘」に気づいたお役人は急に「ずる賢く」なって「俺は知らない」と逃げる。
 ちょっと、情けない。
    ×  ×  ×
 でも、この「名称の半嘘」だけは、このまま放置していいのか?悩んでいる。
「自衛隊」という「名称の「半嘘」である。コレは「半嘘」どころか、もはや「大嘘」である。
 このところ、安倍内閣は「いずも」型護衛艦の空母化を推し進め、F35B戦闘機まで手に入れようとしている。これでもか、これでもか、と軍拡路線を突っ走っている。
 待ってくれ! 日本は「専守防衛」で国民を守る国ではなかったか?
 だから攻撃型空母、長距離戦略爆撃機、大陸間弾道弾(ICBM)など、相手国に壊滅的な打撃を与えるような「攻撃的兵器」は「自衛のための必要最小限度の範囲」を超えているから、憲法上、保有できない。だから「自衛隊」なのだ。
    ×  ×  ×
「いずも」型護衛艦を空母化する軍隊が「自衛隊」であるはずがない。それは「国防軍」である。
 安倍内閣は、現行の憲法第九条一項、二項をそのまま残し、新しく「自衛隊保持」の項目を追加する改憲を目指している。
 つまり、「自衛隊」という曖昧な名称を憲法に紛れ込まして、事実上「攻撃可能な国防軍」を作ろうとしている。いや、改憲を先取りして、すでに作り上げている。
 そればかりではない。安倍政権は、FMS(米国政府の対外有償軍事援助)という形で、2019年度予算ベースで7013億円相当の「アメリカ製兵器」を爆買いしようとしている。
 どこが「専守防衛の自衛隊」なのだ!
 当方から見れば、空母は潜水艦の格好の巨大標的でしかないのに......安倍政権はそれに気づかない。
 その防衛オンチが、憲法に「半嘘の自衛隊」を紛れ込ませようとしている。困った、困った。

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