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青い空白い雲
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「大嘘」より始末が悪い"地震予知・消費増税"の「半嘘」

2019年2月17日号

牧太郎の青い空白い雲/705 

「世の中には3種類の嘘(うそ)がある。嘘、大嘘、そして統計だ」
 19世紀のイギリスの首相ベンジャミン・ディズレーリの言葉は、厚生労働省の毎月勤労統計の犯罪的偽装?が槍(やり)玉に挙げられて「名文句!」と言われるようになった。統計の「嘘」は大罪だ。
 でも「嘘」の種類にはもう一つある。「半嘘」というやつである。
 いかにも、もっともらしく「本当!」と思わせるのだが......ちょっと冷静になると「嘘っぽい」。でも信頼できる人間、学問、組織......まして国家が「正しい!」と言っているから「真っ赤な嘘!」とは言い辛(づら)い。そこで「半分は嘘」で片付ける。
    ×  ×  ×
 例えば「地震予知」である。政府が毎年発表する「ハザードマップ」(確率論的地震動予測地図)。何時(いつ)も、この地図では「東海~南海地域」が濃い色。つまり「強い揺れが発生する可能性が高い」地域。今にも南海トラフ巨大地震が起こりそうな気持ちになる。
 しかし、実際には「強い揺れの発生確率が低い」とされた東北、九州、北海道で次々に大地震が起こっている。
「地震予知」は怪しい?
 でも、信頼される新聞、テレビは相変わらず「南海トラフ巨大地震が30年以内に発生する確率は70~80%」と喧伝(けんでん)する。1978年、政府は東海地震を想定して「大規模地震対策特別措置法」を施行しているから、まんざら嘘でもないだろう。だからといって、科学的に信頼できる「前兆現象」は確認されていないのも事実だ。
 地震予知の学者・専門家は東日本大地震の時「想定外だったので、予知できなかった」と"お詫(わ)び"した。が、決して「地震予知は無理」とは言わなかった。
 どうしたものか? 人々は仕方なく「半嘘」に分類している。
    ×  ×  ×
 世の中「半嘘」ばかりだ。早い話、今年10月に施行される消費税増税である。「半嘘」のオンパレードである。
「深刻な財政難のなか、少子高齢化に伴い増え続ける社会保障費の財源を確保するには消費税増税しかない」と言われると納得する。
 でも、デフレ脱却を果たせていない状態で消費税率を引き上げれば、日本経済に深刻な悪影響を与える。これもまた理解できる。
 どちらかが、嘘をついている。
「直間比率」の議論もそうだ。直接税(所得税・住民税・法人税・事業税など)と間接税(消費税・酒税・たばこ税、揮発油税など)の割合は税制が公平であるか?否か?を示す指標。政府は「間接税は景気の影響を受けにくい。だから消費税増税だ!」という。確かに、日本の場合、直接税は約56%。間接税は約44%。確かに直接税が多い(2010年度)。
 ところが、消費税率が2%アップすれば、直間比率が逆転して、間接税が多くなる。
 税の世界では「直間比率は政府の能力のバロメーター」といわれる。無能な政府は徴収がしやすい間接税に走る。
 例えば「Amazon」。売上10兆円、利益は1兆円だが、世界各地で支払う税金の総計はたった約300億円(2013年)。知恵を絞って節税する。売り上げの約10%を日本で稼いでいるのに「倉庫があるだけ」という理由で税金を出し渋る。
「日米租税条約」で日本はアメリカ企業に対して税の強制徴収ができない。本来なら、この「不平等条約」を変更する努力をしなければならないのに......日本政府はお手上げだ。
 直間是正とは「金持ちと大企業からの徴収」を諦めて「取りやすい貧乏人から搾り取る」方便なのだ。
    ×  ×  ×
 2018年9月26日の安倍・トランプ会談。終わって、トランプ大統領は記者団の前で「日本はすごい量の防衛装備品を買うことになった」とはしゃいだ。アメリカの兵器を買うための消費税アップだとしたら......「社会保障に使う!」は「半嘘」どころか、犯罪的な「真っ赤な嘘」かもしれない。
 地震予知の話に戻そう。以前、ある文科省のお役人が「年度末になると、地震予知研究費をどう使ってよいのか、学者先生は苦労しているんだ」と笑っていた。研究費を稼ぐための「半嘘」だったら......これも犯罪じゃないのか?

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