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青い空白い雲
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弁護士会は「富田林ルパン三世・奇跡の脱走」を説明しろ!

2018年9月 9日号

牧太郎の青い空白い雲/683 

「奇跡」は起こる。
 山口県周防大島町の曽祖父の家に帰省していた藤本理稀(よしき)ちゃん。行方不明で県警や消防など延べ380人を動員しながら発見できなかったのに、78歳のボランティア・尾畠春夫さんが裏山を捜索したら、ものの30分足らずで見つかった。「奇跡」である。
 2歳になったばかりの幼児にマムシ、イノシシが出没する山奥で、68時間も耐えるだけの体力、精神力があったのか? 多分、泣き疲れたら休み、喉が渇いたら近くの水を飲み、できるだけ日陰に隠れ、夜は温かくして眠るという「野生の行動」が幸いしたのだろう。それにしても「奇跡」としか言いようがない。
 尾畠さんが来なければ......。そう考えると「奇跡の人」に会ったのが奇跡だった。
 でも、疑問は残る。警察はなぜ理稀ちゃんを発見できなかったのか? 謎である。警察は行方不明者を捜索するプロ。いくらベテランと言われても、ボランティア(つまり「素人」)に後れを取るなんて......考え難い。
 理稀ちゃんがいなくなった8月12日、警察は曽祖父の家の近くにある4、5カ所のため池にダイバーを潜らせ、同時に川と側溝を捜索。海では海上保安庁の巡視艇が捜索するなど、水の周辺捜索に専念した。13日は人の体温を感知するサーモグラフィー搭載のドローンを飛ばし、警察犬を動員したものの進展なし。捜索隊を山にも振り分けたと説明しているようだが。
 幼児の叫び声は3000~4000ヘルツで、人間の耳に一番聞こえやすい高さだそうだから、理稀ちゃんが「お母さん」と泣き叫べば、数十メートル離れていても聞こえるはずではないか? どこかに「抜かり」があったように思えてならない。
 なぜ、警察は発見できなかったのか? その謎を聞きたいが......。警察に「赤っ恥」をかかせるようで......。説明責任の追及?はこのくらいにしておきたい。
    ×  ×  ×
 しかし各地の刑務所などで話題になっている「富田林ルパン三世の奇跡の脱走」に関しては、厳密な「説明責任」が必要だ。警察の「牢(ろう)」から逃げ出すなんて......。盗人仲間では間違いなく「奇跡」だからだ。
 大阪府警富田林署の面会室を遮る「アクリル板」を無理やり外して、外に出て逃走した樋田淳也容疑者は、府警が3000人態勢で行方を追いかけているが、この時評を書いている時点(8月21日)でも捕まっていない。
「漫画の『ルパン三世』が大好き」と言っていた容疑者は、報道によれば脱走してから赤い自転車、黒いミニバイクを盗み、ひったくり事件を起こし、あちこちに出没。何やら「脱獄ゲーム」を楽しんでいるふうにも見える。
 警察にとって、この前代未聞の不祥事には「弁護士」が絡んでいる。
 理稀ちゃんがいなくなった同じ8月12日の夜、樋田容疑者は弁護士と接見した。終わった後、弁護士に「面会が終わったことは自分から警察に伝えます」と話す。このやり取りは以前にもあったらしく、弁護士さんは帰ってしまった。
 一人になった"ルパン三世"は「アクリル板」を蹴破り逃げ出す。富田林署が気付くまで約2時間。「奇跡の脱走」がこうして可能になった。
    ×  ×  ×
 大阪府警は、樋田容疑者の顔写真だけでなく、歩く姿の動画、似顔絵、ウサギに小判をあしらった入れ墨まで公開して情報提供を求めているが、捕まらない。
 実はこの男、留置場の小さな窓を指さして「ダイエットしたら、窓の隙間(すきま)から外に出れるかな」「病気のふりして、外で医者に診てもらったら逃げれるかな」などと冗談半分で話し、"牢屋仲間"に「ルパン三世みたいに脱獄したらすごいでしょうね」と話していたという。
 計画犯罪だ。警察のドジは言うまでもないが、気になることがある。黙って面会室から帰ってしまった弁護士のこと。なぜかメディアは追及しない。少なくとも、弁護士には「説明責任」がある。
 なぜ黙っているのか?
 接見する弁護士に対し警察は「終了した際は声を掛けてほしい」と伝えていたそうだ。弁護士側の扉には、開くとブザーが鳴る装置があったが、同署は「接見終了時に、弁護士が署員に声を掛けることが多いから不要」として電池を抜いていた。
「奇跡の脱走」を可能にしたのはまさにここにある。もちろん弁護士に「脱走幇助(ほうじょ)」があるなんて思わないが、落ち度はある。なのに、本人も弁護士会も黙ったままだ。
 何かにつけて「説明責任」を言い出す弁護士業界の人々はどう考えているのか?
 法の番人は自分勝手だ!
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 太郎の青空スポットは、今号はありません。
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 ◇まき・たろう
 1944年生まれ。毎日新聞に入社後、社会部、政治部を経て『サンデー毎日』編集長に。宇野宗佑首相の女性醜聞やオウム真理教問題を取り上げる。現在、毎日新聞客員編集委員。ブログに「二代目・日本魁新聞社」がある

[写真]警察の大失態

<h1>牧太郎の青い空白い雲
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/683 弁護士会は「富田林ルパン三世・奇跡の脱走」を説明しろ!

「奇跡」は起こる。
 山口県周防大島町の曽祖父の家に帰省していた藤本理稀(よしき)ちゃん。行方不明で県警や消防など延べ380人を動員しながら発見できなかったのに、78歳のボランティア・尾畠春夫さんが裏山を捜索したら、ものの30分足らずで見つかった。「奇跡」である。
 2歳になったばかりの幼児にマムシ、イノシシが出没する山奥で、68時間も耐えるだけの体力、精神力があったのか? 多分、泣き疲れたら休み、喉が渇いたら近くの水を飲み、できるだけ日陰に隠れ、夜は温かくして眠るという「野生の行動」が幸いしたのだろう。それにしても「奇跡」としか言いようがない。
 尾畠さんが来なければ......。そう考えると「奇跡の人」に会ったのが奇跡だった。
 でも、疑問は残る。警察はなぜ理稀ちゃんを発見できなかったのか? 謎である。警察は行方不明者を捜索するプロ。いくらベテランと言われても、ボランティア(つまり「素人」)に後れを取るなんて......考え難い。
 理稀ちゃんがいなくなった8月12日、警察は曽祖父の家の近くにある4、5カ所のため池にダイバーを潜らせ、同時に川と側溝を捜索。海では海上保安庁の巡視艇が捜索するなど、水の周辺捜索に専念した。13日は人の体温を感知するサーモグラフィー搭載のドローンを飛ばし、警察犬を動員したものの進展なし。捜索隊を山にも振り分けたと説明しているようだが。
 幼児の叫び声は3000~4000ヘルツで、人間の耳に一番聞こえやすい高さだそうだから、理稀ちゃんが「お母さん」と泣き叫べば、数十メートル離れていても聞こえるはずではないか? どこかに「抜かり」があったように思えてならない。
 なぜ、警察は発見できなかったのか? その謎を聞きたいが......。警察に「赤っ恥」をかかせるようで......。説明責任の追及?はこのくらいにしておきたい。
    ×  ×  ×
 しかし各地の刑務所などで話題になっている「富田林ルパン三世の奇跡の脱走」に関しては、厳密な「説明責任」が必要だ。警察の「牢(ろう)」から逃げ出すなんて......。盗人仲間では間違いなく「奇跡」だからだ。
 大阪府警富田林署の面会室を遮る「アクリル板」を無理やり外して、外に出て逃走した樋田淳也容疑者は、府警が3000人態勢で行方を追いかけているが、この時評を書いている時点(8月21日)でも捕まっていない。
「漫画の『ルパン三世』が大好き」と言っていた容疑者は、報道によれば脱走してから赤い自転車、黒いミニバイクを盗み、ひったくり事件を起こし、あちこちに出没。何やら「脱獄ゲーム」を楽しんでいるふうにも見える。
 警察にとって、この前代未聞の不祥事には「弁護士」が絡んでいる。
 理稀ちゃんがいなくなった同じ8月12日の夜、樋田容疑者は弁護士と接見した。終わった後、弁護士に「面会が終わったことは自分から警察に伝えます」と話す。このやり取りは以前にもあったらしく、弁護士さんは帰ってしまった。
 一人になった"ルパン三世"は「アクリル板」を蹴破り逃げ出す。富田林署が気付くまで約2時間。「奇跡の脱走」がこうして可能になった。
    ×  ×  ×
 大阪府警は、樋田容疑者の顔写真だけでなく、歩く姿の動画、似顔絵、ウサギに小判をあしらった入れ墨まで公開して情報提供を求めているが、捕まらない。
 実はこの男、留置場の小さな窓を指さして「ダイエットしたら、窓の隙間(すきま)から外に出れるかな」「病気のふりして、外で医者に診てもらったら逃げれるかな」などと冗談半分で話し、"牢屋仲間"に「ルパン三世みたいに脱獄したらすごいでしょうね」と話していたという。
 計画犯罪だ。警察のドジは言うまでもないが、気になることがある。黙って面会室から帰ってしまった弁護士のこと。なぜかメディアは追及しない。少なくとも、弁護士には「説明責任」がある。
 なぜ黙っているのか?
 接見する弁護士に対し警察は「終了した際は声を掛けてほしい」と伝えていたそうだ。弁護士側の扉には、開くとブザーが鳴る装置があったが、同署は「接見終了時に、弁護士が署員に声を掛けることが多いから不要」として電池を抜いていた。
「奇跡の脱走」を可能にしたのはまさにここにある。もちろん弁護士に「脱走幇助(ほうじょ)」があるなんて思わないが、落ち度はある。なのに、本人も弁護士会も黙ったままだ。
 何かにつけて「説明責任」を言い出す弁護士業界の人々はどう考えているのか?
 法の番人は自分勝手だ!

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