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青い空白い雲
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「二手指し」の妙技で「オウムの林郁夫」が恩赦になる?

2018年8月12日号

牧太郎の青い空白い雲/680 

 将棋の若き天才・藤井聡太七段が「二手指し」をした!という"疑惑"が隠れた話題になった。
「二手指し」は相手の順番をすっ飛ばし、そのまま「二手続けて指す」行為。当然、反則負けである。
 コトは6月29日、藤井聡太七段と増田康宏六段が対戦した、竜王戦決勝トーナメント2回戦。インターネット中継で放送された終盤の局面を見ると、上側(後手)の藤井クンが「後手8六桂」と打ちかけている姿が映っている。ところが次の瞬間、藤井クンは「8六の桂」を駒台にあわてて戻し「後手8九飛」と王手を打った。
 何が起こったの? 「二手指し」ではないの? 視聴者のコメントが画面に一斉に流れた。
 素人だから単なる想像になるが、その瞬間"天才"は「8六桂は悪手!」と気づいたのだろう。いつも冷静な藤井クンは珍しくあわてていた。
 ここで問題になったのは「後手8六桂」と打ちかけた時、藤井クンの指が駒から離れたかどうかである。指が駒に付いていたら着手は未了、駒から離れていたら着手は完了。藤井クンの「指」は離れていたか?
 日本将棋連盟は、反則ではないか?とネット上で問題になったことを受け、「常務理事が映像で確認し、反則ではないと判断しました」と説明。一件落着となったが、天才もたまにはドジを踏む。
    ×  ×  ×
 将棋では反則!と決まっている「二手指し」だが、世の中、権力者が平気で「二手指し」をする。
 それは「政治向き」の話だけではない。金儲(もう)けの話だけではない。
 例えば、オウム真理教の麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚ら13人の死刑が執行された話である。何やらテレビの"処刑ショー"のような雰囲気で、あまり「良い気分」ではなかったが......。それはそれとして、当方には「次なる一手」が指されたような気がした。
「恩赦」である。
 天皇陛下の退位と新天皇即位に伴う改元が控えている。時代の大きな節目には「恩赦」が適用される。1989年の昭和天皇崩御(約1017万件)や90年の天皇陛下即位(約250万件)、93年の皇太子さまご結婚時にも実施された(皇太子さまご結婚の時の恩赦の内訳は「特赦」90件、「減刑」246件、「刑の執行免除」10件、「復権」931件の計1277件)。
 果たして、今回は?
 容疑者仲間同士が警察の留置場の中で「早くゲロして、恩赦をもらったほうがいい」なんて、半分冗談で相談しているらしい。
    ×  ×  ×
 そこで、注目されるのは......。オウムの犯罪者が「恩赦」になるかどうか?である。
 注目は「元幹部の林郁夫受刑者」だ。
 サリン事件の実行犯でありながら、ただ一人死刑にならなかった。想像するに、最初に口を割って全容解明に"貢献"したことで死刑を免れたのだろう。論告求刑時点で、死刑でなく無期懲役だった。
 林受刑者は恩赦の対象になるのか? 気になる。
 服役20年以上、反省しているから有期刑に減刑! これが麻原らの処刑と同時に決定されたのではないか?
    ×  ×  ×
「恩赦」は極めて政治的なイベントである。
 古代、日本には、犯罪と刑罰は「神に対するツミ(罪→穢(けが)れ)とハラエ(祓→清め)」として考えられていた。だから神ではない人間が、「刑を一方的に軽減すること」はできなかった。
 ところが江戸時代、宝永6(1709)年に、将軍綱吉が死去。続く新将軍・家宣の就任に伴って、大がかりな「恩赦」が二度行われ、全国8831人が大赦の対象になった(新井白石の『折たく柴の記』)。その狙いは、傍流から入った新将軍の恩恵を示すことで政治基盤を強化するためだ。以来、「恩赦」は時の権力の権威保持の道具になった。
 大日本帝国憲法下の恩赦は天皇の大権事項だったが、現憲法下では、恩赦の決定は内閣が行い、その認証は天皇の国事行為(憲法73条7号、7条6号)。つまり、自民党が「司法権行使の効果」を変動させる「魔法の力」を発揮する。今回も権威保持のために大々的な「恩赦」を敢行するのだろう。
 で、権力に素直になった「オウムの残党」を許す。そうなったら国民はどう思うだろうか?
 過去、1952年のサンフランシスコ講和条約による恩赦で「5人殺害事件」の死刑囚の男を無期懲役に減刑したという例があった。ところが、この男は仮釈放後に殺人未遂事件を起こした。
 この時、「恩赦」という司法権行使の変更に反対する意見もあったが......。麻原処刑→林恩赦の「二手指し」を人々はどう見るのか?

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