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青い空白い雲
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加計も、日大も「危機管理学部」なんてよく言うよ!

2018年6月10日号

牧太郎の青い空白い雲/671 

「危機」は突然やって来る。どこからでも、誰にでも「危機」はやって来る。
 週刊誌の関心事は3S(政治・セックス・スポーツ)!とされていた時代があった。今は新3K(経済・健康・孤独)とも言われるそうだ。金儲(もう)け、長生き、ステキな一人暮らし......を書けば、『サンデー毎日』は売れる。
 しかし考えてみると、この新3K、煎じ詰めると「危機管理」である。誰にでもやって来る「貧乏の危機」「がんの危機」「孤独死の危機」に立ち向かう知恵である。
 相変わらず「不倫もの」も歓迎されるが、それは「セックス」ではなく、なぜ不倫がバレたのか? 不倫話で誰が儲けているのか?「不倫の危機」が売り物である。
 つまり、我々は週刊誌で新3Kの「危機管理」を学んでいるのだ。
    ×  ×  ×
 週刊誌がそのくらいだから「危機管理」が学問になってもおかしくない。
 某大学の「危機管理学部」の案内書にはこう書いてある。
【社会のリスク・危機に迅速に対応する知識を学ぶ「危機管理システム学科」、持続可能な地球環境の保全と環境教育について学ぶ「環境危機管理学科」、人の健康と生命を守るための知識と技術を学ぶ「医療危機管理学科」、工学的な技術と航空機について学ぶ「航空技術危機管理学科」、ヒトと動物の適切な関係を学ぶ「動物危機管理学科」の5つの学科で構成されています。これらの学科が連携し、社会を、そして地球を助ける危機管理の専門家を大切に育てています】
 ご立派である。
 でも、よく読んでみると環境学、医学、航空学、動物学などという従来の学問とどこが違うのか? 疑問だ。いま流行(はや)りの「危機管理」という言葉を使っているだけではあるまいか? ともかく胡散(うさん)臭い。
 調べてみると、2018年度、この大学の危機管理学部は定員300人なのに、入学したのはわずか146人。半分にも達しない。
    ×  ×  ×
 この「危機管理」が売り物の大学は、「千葉科学大学」である。西日本を中心に4法人、21の教育施設を持つとされる、例の"アベ友"、加計(かけ)学園グループが2004年に、初めて首都圏で開いた大学である。
 開校に至る「不透明な経緯」はいまだ解明されていないが、千葉県銚子市は加計学園に市有地9・8ヘクタールを無償貸与した上、92億1500万円の補助金を提供して誘致した。
 銚子市の年間予算は約240億円である。その年間予算の40%近いカネを「危機管理の大学」に投じたことになる。しかも、加計グループを応援した補助金のかなりの部分が市の借入金。銚子市民は、加計グループのために多額の借金をして、2025年まで返済を続けなければならない。
「次代を先取りして新しい取り組みに挑戦し、社会で活躍できる実践的な人材育成を目指す」と言うが、学生がどうしても集まらない。つまり、人気がないのだ。
 当然、授業料収入も減る。 
 私学補助金の金額は収容定員に対する在学者数の割合を示す「収容定員充足率」で決まる。17年度の危機管理学部の充足率は71%で、大学全体として今年の補助金は前年から約3500万円ダウンしている。「危機」である。銚子市民も「危機」である。
    ×  ×  ×
 加計学園を真似(まね)た!とは言わないが、天下の日本大学も「危機管理学部」を16年春に開いた。「オールハザード・アプローチの視点で、多様な危機を理論と実践の両面から追究します」
 こちらは、危機管理の最前線で活躍してきた法務省、国土交通省、警察庁など官公庁出身の実務家教員が教壇に立ち、実績を上げているという。
 が、例のアメリカンフットボールの"殺人タックル騒動"である。まず謝らなくてならないのに、日大の前監督は他人事(ひとごと)のように振る舞い、謝っても相手の大学名「かんせいがくいんだい」を「かんさいがくいんだい」と発言する始末。
「何一つ危機管理ができていないのに、一体何を教えるんだ」「危機管理学部がある日大だけど、危機管理対応ができていない日大」と笑われる。はっきり言って、日大の殺人タックル騒動は「危機管理学」以前、人間学の範疇(はんちゅう)だ!

 

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