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青い空白い雲
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「ロボットに給料を払う時代がやって来る!」と思うと...

2018年4月15日号

牧太郎の青い空白い雲/664 

「アルファ碁」をご存じだろうか?

 Google DeepMindが開発したコンピューター囲碁プログラムだ。10年前まで、囲碁のソフトはプロ棋士にとって"箸にも棒にもかからない存在"だった。が、その技術は劇的に進歩。2015年10月、「アルファ碁」は初めて人間のプロ囲碁棋士を互い先(ハンディキャップなし)で破った。
 その後 「アルファ碁」は敵なし? 17年5月には世界最強のプロ棋士・柯潔(かけつ)九段との三番勝負で全勝。やむなく、中国囲棋協会は「プロの名誉九段」を授与した。これを機に、Google DeepMindは「アルファ碁」を人間との対局から引退させた。
 注目されるのは、「アルファ碁」は棋譜のパターンをプログラミングされたのではなく、人工知能(AI)が自ら棋譜を学習して勝った!という事実である。
 人間が10年かけて学ぶことをAIは数週間で習得した。人間はなぜ、AIに負けるのか?
 人間の処理速度は速い。が、どうしても脳が疲れる。繰り返し計算することに限界が生じる。だから、いくら優秀な人間でも「疲れを知らぬAI」に勝てないのだ。
    ×  ×  ×
 陽春の4月である。孫たちが新しい生活を始めた。20歳のAは料理専門学校を卒業して、かなり有名なレストランに就職した。緊張しているが、うれしそうだ。18歳のTは理系大学に進学して「情報学」を学ぶことになった。
 ウキウキする季節だ。
 でも5年、10年、20年経(た)って、この二人はどんな生活をしているか? 二人とも「安定した職業」を持ち、楽しい生活を送っていると思うが......。ちょっぴり心配なことがある。AI時代の到来である。
 AIに、ロボットに「仕事」を奪われ、失業しているのではないか? なんて、心配しているのだ。
 たとえば、警備の仕事である。
 センサー技術の進化で、24時間、見張りをすることができる。人間のように「休憩」はいらない。早い話が、防犯カメラのように街中にセンサーを設置すれば、犯罪の抑止に役立つ。警備員や警官の仕事が激減するだろう。
 大都市の水道管にセンサーをつけると、水漏れのトラブルは半減した。水道の不具合をチェックする仕事は少なくなる。
 かなりの数の人間が失業するのではあるまいか?
 ビッグデータが「社会」を変えようとしている。
 医療診断を例にしよう。アメリカでは約60万件の医療報告書、約150万件の患者記録、臨床試験の結果、それに約200万ページ分の医学雑誌の記事を解析したコンピューターが、それぞれの患者に相応(ふさわ)しい治療計画を作ることが可能になった。
 ビッグデータは法律の分野でも活用される。過去の判例をチェックしてデータ化するのはAIの「十八番(おはこ)」だ。弁護士の助手は不要になる?
 AI時代になくなる仕事は......集金人、露天商、弁護士の助手、ホテルの受付係、映写技師......。自動運転が可能になればタクシーの運転手、長距離トラックの運転手も要らなくなるかもしれない。
 2030年代、専門分野に特化したAIが誕生する? そうなれば医師、弁護士、裁判官、スポーツの審判といった専門性の高い仕事もAIがこなすようになるかもしれない。
 大失業時代がやって来る。孫たちは、AI時代に生き残れるか? 不安である。
    ×  ×  ×
 知的生産活動がAIに取って代わられる。それは仕方ないのだが。その過程で数々のトラブルが起きる。
 日本年金機構がデータ入力を委託した業者「SAY企画」が、契約に違反して中国の業者にデータ入力を再委託していたことが発覚した。
 個人情報の入力ミスが約95万2000人分も発生していた。人間とAIの「共同作業」がうまくいかず、トラブルが起きた典型的なケースではあるまいか?
 自動運転のクルマが死亡事故を起こした。運転席にいた人間の責任が問われた。自動運転に「事故ゼロ」を要求すべきか?議論になっている。
 AIの登場で、人間の仕事の概念が一変した。その過渡期、人間は右往左往する。
 宅配業者は、クルマが自動で操作してくれるから配達の効率は劇的に上がり、楽になり、企業側は儲(もう)けるが......。大量失業の危機がやって来るのは避けられない。
 ロボットは高い給料を要求するだろう。その分だけ、人間は貧乏になる。
 桜の季節なのに......「孫たちの未来」を想像して、急に不安になってしまった。

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