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人生の四季
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「『生活の古典』を大切に」

2018年2月11日号

一条真也の「人生の四季」/115 

 早いもので、この前、年が変わったと思ったら、今年の正月も終わる。みなさんは正月を祝っただろうか。わが家では、いつものように門松や鏡餅などの正月の飾りをした。
 もともと正月というのは、年神(としがみ)を迎える年中行事である。古い信仰の形では、年神は祖霊神としての性格が強かったといわれる。すなわち、お盆とは対(つい)の関係にあったのだ。
 民俗学者の折口信夫は、年中行事を「生活の古典」と呼んだ。彼は、『古事記』『万葉集』『源氏物語』などの「書物の古典」とともに、正月、節分、雛(ひな)祭り、端午の節句(せっく)、七夕、盆などの「生活の古典」が日本人の心にとって不可欠であると訴えた。
 國學院大客員教授の岩下尚史(ひさふみ)氏は、著書『大人のお作法』の中で、「正月もそのうち実体がなくなる。おそらく今の80代の人たちが絶える頃には、寺社は別としても、古風な信仰を保つ人たちを除いては、単なる1月になるだろう」と予測する。
 岩下氏によれば、いま、「伝統文化とか伝統芸能を大切にせよ」などとよく言われるが、それはわたしたちの暮らしの中で昔から伝承されてきた「生活の古典」がなくなる前触れではないかという。同感である。
 文化が大きく変化する、あるいは衰退するのは、日本の場合は元号が変わった時であると言われている。実際、明治から大正、大正から昭和、昭和から平成へと変わったとき、多くの「生活の古典」としての年中行事や祭り、しきたり、慣習などが消えていったという。
 そして、平成も終わり、新しい元号へと変わる。来年の2019年4月30日、天皇陛下は退位されることになった。平成は来年の4月末で終わる。翌5月1日に改元となる。
 わたしはいま、年中行事についての本を執筆している。今春にPHP研究所から刊行予定だが、新しい時代となっても、日本人が「生活の古典」を大切にすることを願っている。2月になったら節分がある。わが家も、豆撒(ま)きをする準備をしなければ。

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