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青い空白い雲
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トランプ暴走の危機? 日米地位協定を破棄しなければ

2017年9月24日号

牧太郎の青い空白い雲 636 

 戦争に負けると(一時であれ)主権は失う。
 G7(主要7カ国)の中で、米軍基地があるのはイタリア、ドイツ、日本。第二次大戦の敗戦国である。 同盟国という名目で、戦勝国アメリカに「国土の一部」を提供せざるを得ない。
 しかし、イタリア、ドイツは基本的に日本と違う。安全保障面で、両国は「ある種の主権」を取り戻しているのだ。
 たとえば、イタリアの場合、駐留米軍は軍事訓練や演習を行う時には必ずイタリア政府(軍)の許可を受けなければならない。米軍基地はイタリア軍の司令官の下におかれ、米軍は重要な行動のすべてを事前通告しなければならない。ドイツでは「国民の利益にならなければ、基地返還を要求することができる」と決められている。
 だというのに......。
 日本は相変わらず「アメリカの言いなり」である。
    ×  ×  ×
「日米地位協定」なるものが存在するからだ。日本国内でありながら、アメリカ軍人は、日本の法令は適用されず、駐在公館並みの「治外法権」が保障される。逆に、日本国民の人権が侵害されているケースが次々に起こる。
 ご記憶の方もいると思うが、1995年、アメリカ海兵隊員2人と米海軍軍人1人の計3人が12歳の女子小学生を拉致したうえ、集団強姦(ごうかん)した。裁判自体は日本の管轄で行われたものの、実行犯である3人は日本側に引き渡されなかった。いわゆる沖縄米兵少女暴行事件である。日本が事実上、「主権」を放棄しているから起こる悲劇なのだ。
 イタリア、ドイツの両国が冷戦後、大使館の土地以外の管理権をアメリカから取り戻した!というのに......日本は「独立国家」なのか? はなはだ疑問だ。
    ×  ×  ×
 ちょっと"おっちょこちょい"との評判だが、江崎鉄磨沖縄・北方担当相が就任直後に、「日米地位協定をもう少し見直さないといけない」と発言した。やっとマトモな政治家が登場した、と思った。
 ところが、その日のうちに、江崎さんは「地位協定は見直さない」という政府の方針に従い、発言を撤回した。官房長官あたりから怒られたのだろう。
"おっちょこちょい大臣"の「発言撤回」は予想されたが、問題は、メディアが真正面から「日米地位協定の矛盾」を取り上げようとしないことである。
 なぜ、イタリアもドイツも成功した「主権奪還」を日本のメディアは主張しないのか?
 安倍さんは「日本を取り戻す」が口癖なのだから、メディアが「米軍から主権奪還キャンペーン」を展開すれば、安倍さん、文句は言わないだろう。
    ×  ×  ×
 北のミサイル、核実験......このところ、テレビなどメディアは「米朝の危機」をあおっている。確かに、金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長は「特異な人物」なのだろう。
 しかし、こんなテレビ番組ばかりで、北朝鮮を理解することはできない。国際情勢の認識は深まるのか?
 日本のメディアは、戦勝国アメリカの言い分を垂れ流しているだけではないか? 「暴走の危機」ということでいえば、トランプ大統領だって同じだろう。
 日本上空を北朝鮮のミサイルが通過した8月29日、韓国の主な地上波テレビのトップニュースは、ミサイルではなく、殺虫成分に汚染された卵の問題だったという。
 なぜ、こんなに温度差があるのか?
 安倍さんは「これまでにない深刻かつ重大な脅威」と強調するが......。トランプ政権に歩調を合わせるしか選択肢がない証拠だろう。
 この際、「日米地位協定」を破棄して、独立国としてモノを言うべきではないだろうか。

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