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青い空白い雲
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地方紙の「誇り」を知った。NHK・読売は政権の言いなりになるな!

2017年7月16日号

牧太郎の青い空白い雲 627

 隅から隅まで日本列島を歩いてから死にたい。
 1年前、肺がんの手術を経験して、ホンの少しだが「人間、いつかは死ぬんだ」と思うようになった。だったら「寅さん」のように旅をして死にたい。そんな気分で6月22日夜、仙台からフェリーに乗った。
 目指すは北の大地。翌日、苫小牧の「ウトナイ湖」で野生鳥獣を観察してから、国道で日高へ。太平洋はキラキラしている。新冠(にいかっぷ)温泉のホテルで一泊した。
 その翌日は道の駅「みついし」から襟裳岬へ。
〈北の街ではもう...〉で始まる「森進一節」を口ずさむ。 〈理由(わけ)のわからないことで 悩んでいるうち 老いぼれて...〉。まさに、そんな気分だ。
 風が強かった。右半身マヒの僕には、岬の突端に行くのは難儀で......着いてみれば〈襟裳の春は 何もない春です〉との文句通り「昆布干し」と「自衛隊」以外、何もなかった。寂しい。猛烈に寂しい。
 天馬街道から帯広へ。ここで二泊して、道東自動車道を利用して室蘭へ。洞爺(とうや)湖のホテルで一泊。いま28日未明、函館のホテルでこの「青い空白い雲」を書いている。
 多分、本誌が発売される頃には、東京に戻っているつもり。約10日間、北海道の長旅になるだろう。
    ×  ×  ×
 北海道は新聞王国である。旅行中、ブロック紙『北海道新聞』やその地の地元新聞を必ず読んだ。
『苫小牧民報』は、系列の『千歳民報』を合わせて約6万部。苫小牧市内に限っては、『北海道新聞』を上回っている。勝毎(かちまい)こと、『十勝毎日新聞』は帯広に本社を持つ、約9万部の夕刊紙。老舗ホテルを経営していて、今回はそこに泊まった。朝日新聞系のようだが「社説」がないのが、最大の特徴である。『室蘭民報』は1902年創刊の『室蘭時報』がルーツ。41年、政府の一県一紙政策により『室蘭タイムス』と合併、『室蘭日報』に改題したが、その翌年には道内に点在するローカル紙が全て統合するように命令され「北海道新聞社室蘭支社」になった。
 戦後まもなく、地元経済団体を中心に地元紙復活の機運が高まり、45年12月8日、北海道内のローカル紙のトップを切って『室蘭民報』が生まれた。現在、都道府県庁所在地以外に本社を置く新聞社で朝夕刊セット発行を行っているのは、全国でも室蘭民報社だけだ。室蘭・登別に限れば、『北海道新聞』の購読者数を上回っている。
 いま机の上にある『函館新聞』。この題字には「物語」がある。94年頃、ブロック紙の北海道新聞社は、函館市で夕刊が創刊される、と察知した。そこで「函館新聞」「函館毎日新聞」「函館日日新聞」「函館タイムス」「夕刊函館タイムス」「夕刊函館」「新函館」「南北海道新聞」「道南新聞」の九つの題字商標登録を出願した。事実上、営業妨害ではあるまいか? 結局『函館新聞』に落ち着いたが、北海道の新聞界は大揺れに揺れた。
 ともかく、北海道の地方新聞は「それぞれの経緯」を持ちながらも頑張っている。それが、紙面から滲(にじ)み出ている。
    ×  ×  ×
 各地で地元新聞と戦っている『北海道新聞』は、彼らのリーダーでもある。反権力の砦(とりで)のような存在でもある。
 旅行中「加計(かけ)学園」騒動で、文科省の前川喜平前事務次官が日本記者クラブで会見。「官邸は理由をつけて真相解明から逃げようとしている。首相自ら説明責任を果たすべきだ」と一連の政府の対応を批判した。このままでは民主主義は崩壊する。覚悟の記者会見だ。
 当然、大手紙もそれなりに報道したが、『北海道新聞』は違っていた。一面トップ。その他に記者会見の一問一答、解説などで2ページ。力が入っている。新聞はこうじゃなければ。感動した。
 それに引き換え、一部の大メディアは読者を裏切っていないか? NHKは最初に前川インタビューを実現したが、なぜか放送しなかった。『読売新聞』は「前川前次官 出会い系バー通い/文科省在職中、平日夜」という妙ちきりんな見出しの記事を掲載した。この一件では当方、「WEBRONZA ― 朝日新聞社の言論サイト」(6月28日)でも書いている(「民主主義を大事にするため守るべき『流儀』――記者は総会屋とは違う。真実にこだわれ。政権の言いなりになるな」)。
 これも読んでもらいたい。新聞好きの北海道を旅行中、あちこちで「反権力」の流れを実感した。NHKの受信料支払い拒否の動きも聞いた。『読売新聞』から「正義の地方新聞」に変えると言った人もいた。驕(おご)れる者久しからず! ではないのか。

 

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