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青い空白い雲
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昼ドラ「やすらぎの郷」に夢中になる「特養待ち組」?

2017年4月30日号

牧太郎の青い空白い雲 617

 桜が満開の頃、あの「川奈ホテル」を宿泊ではなく"探検"した。
 伊豆半島では、数少ない歴史ある洋風ホテル。政治家・著名人の宿泊が多い。1998年4月18日、当時の橋本龍太郎首相とボリス・エリツィン露大統領が首脳会談を行ったホテルだ。併設のゴルフ場は珍しい海沿いコースで、毎年、フジサンケイレディスクラシックが開催される。
 学者センセイが、この土壌から分離された放線菌を利用して、抗寄生虫薬開発に成功。ノーベル生理学・医学賞を受賞した。
 もともとは大倉財閥の別荘だった。明治時代、大倉喜七郎が英国留学中、貴族たちが利用するゴルフ場、乗馬、テニス、フィッシング、プールなどの施設を備えたスコットランドの「グレンイーグルスホテル」に滞在。感銘を受け、帰国後、そっくりの洋館を建設したという。海にも、山にも近い。
 東急電鉄総帥の五島慶太から「ホテル前に伊豆急行線の駅を作りたい」と言われ、大倉は「当ホテルはリゾートホテルの趣旨を理解された、ステータスのあるお客様を対象としている。それらの方々は自家用車で来られる。電車で来場する一般客を対象としていない!」と断ったという。
 だから「川奈ホテル」の近くには駅はない。細い道路だけ。世間と隔絶されている。
    ×  ×  ×
 そんな「人里離れたホテル」に、急に行きたくなった理由を正直に話そう。
 4月3日に始まったテレビ朝日の昼ドラ「やすらぎの郷」(月曜~金曜 12時半~12時50分放送)は中高年に大人気だ。毎回、「協力・川奈ホテル」という文字が表示される。
 ということは、ドラマの舞台"夢の老人ホーム「やすらぎの郷」"は、このホテルで撮影しているのではあるまいか? その現場を覗(のぞ)きたくなったのだ。
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「やすらぎの郷」は往年の人気ドラマ「北の国から」(フジテレビ系)でおなじみの倉本聰の書き下ろし。若者向けのドラマが多いゴールデンタイムに対抗して、大人向けの昼の時間帯を選んだ"シルバードラマ"といえる。
 タイトルの「やすらぎの郷」というのは、テレビ界に大きな貢献をしてきた役者、監督、脚本家だけが無料で入れる老人ホームの名前なのだ。
 登場するのは「かつての美男美女」である。
 主役の石坂浩二が75歳。女優陣は浅丘ルリ子76歳、有馬稲子85歳、加賀まりこ73歳、五月みどり77歳、野際陽子81歳、八千草薫86歳......往年の大女優ばかりではあるが、要するに「爺(じい)さん」「婆(ばあ)さん」ばかりである。
 昭和の映画界、テレビ界を支えてきた錚々(そうそう)たるスターたちが揃(そろ)うというのが人気の秘密で、初回の平均視聴率は8・7%。好スタートを切った。
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 倉本の脚本は芸能界の大事件をオーバーラップさせる。
 たとえば、2009年に死後約1週間経(た)って発見された大原麗子の孤独死の話が出てきたり......。
 倉本流のイタズラは、キャスティングの妙としても出ている。石坂浩二と加賀まりこは1960年代、芸能界を沸かせた大物カップル。舞台「泥棒たちの舞踏会」の共演をきっかけに、一時は結婚寸前だった。
 その後、石坂は浅丘ルリ子と結婚するが、浅丘を紹介したのは加賀まりこだった。
 それを記憶しているファンは、このドラマでもう一度「あの三角関係」を堪能する。
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 何より興味深いのは......。「超豪華老人ホーム」って、一体どんなところ?
 ゴルフ場があって、バーがあって、豪華な建物、医師が常駐、スタッフは美人......当方のようにロケ現場を"探検"したくなる。
 一番の「やすらぎの郷」ファンは「特別養護老人ホーム(特養)の順番待ち組」......と聞いた。やっぱりドラマと現実は乖離(かいり)しているんだな。

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