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人生の四季
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「死は不幸ではない」

2017年4月 9日号

一条真也の「人生の四季」 74 

 小倉の紺屋町にあったスナック「レパード」のマスターだった西山富士雄さんが71歳で亡くなられた。わたしは、通夜と告別式の両方に参列した。故人は、わたしにとって、とても大切な人だったのである。
 レパードは2011年秋に閉店。わたしが東京から小倉に戻ってきた頃、初めて訪れた店だった。人生で最もヘビーだった時期に心を休めに通った「止まり木」だった。
 西山さんは豊かな教養の持ち主で、話題も豊富だった。大変な読書家で、古今東西の文学作品を読んでいた。わたしの本もよく読んでくれたようだが、いつも「俺は、あなたの『死は不幸ではない』という言葉が好きなんよ」と言ってくれた。
 わたしは、人が亡くなったときに日本人が「不幸」と表現することに違和感を抱いていた。死なない人間はいない。いわば、わたしたちは「死」を未来として生きているのである。その未来が「不幸」であるということは、人間は必ず敗北が待っている負け戦に出ていくようなものだ。
 わたしたちの人生とは、最初から負け戦なのだろうか。どんな素晴らしい生き方をしても、幸福を感じながら生きても、最終的に不幸になるのだろうか。亡くなった人は「負け組」で、生き残った人は「勝ち組」なのか。そんな馬鹿な話はない!
 死は決して不幸な出来事ではないはずだ。死とは人生を卒業することであり、葬儀とは人生の卒業式だ。だから、西山さんとのお別れは悲しくて仕方がないが、わたしは「不幸」とは思わない。西山さんは、人生を卒業していかれたのだと思っている。
 故人は週刊誌が大好きで、何誌も読んでいたという。特に、『サンデー毎日』の愛読者だった。わたしがこの連載をスタートしたときは「天下の『サンデー毎日』に連載するなんて、たいしたもんだ!」とわざわざ電話をくれた。とても嬉(うれ)しかった。
 マスター、あなたのことを『サンデー毎日』に書かせていただきましたよ。あの世で読んでくれますか?

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