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青い空白い雲
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トランプの夢は「大統領令1081回」のルーズベルト

2017年2月19日号

牧太郎の青い空白い雲 607

 ホワイトハウス執務室のカーテンが深紅から金色に変わった。トランプ大統領は大嫌いなオバマ前大統領の「におい」を消したい。
 オバマ時代に置かれていた公民権運動の指導者キング牧師の像は、もちろん消えた。代わりに、オバマ時代に移動させられたチャーチル元英首相の像が鎮座した。
 それにもう一つ、(ほとんど報道されていないが)執務室の本棚に第26代大統領"テディ"セオドア・ルーズベルト(1858年10月27日~1919年1月6日)の像が置かれた(第32代大統領フランクリン・ルーズベルトとは"遠い親戚"である)。
 ルーズベルトはカウボーイのような男の中の男といった存在だと聞いたが、政治家だけでなく軍人、作家、狩猟家、探検家、自然主義者でもあって、そのどれをとっても"一流"。トランプ氏が彼を尊敬してもおかしくないが......。
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 世界中に「トランプ旋風」が吹き荒れる。多分、日米首脳会談が予定される今週も、トランプ氏の「無理難題」が話題になるだろう。しかし、である。専門家が分かったように解説するが、トランプ旋風の狙いは「何」なのか? いまだに分からない。 
 前回(2月12日号)、「93歳の『キッシンジャー』がトランプ政権の黒幕なの?」と書いたが、トランプ外交がどこに軸足を置いているか?分かりづらい。ハッキリ言えばトランプ氏自身、今何をやっているのか、分からないのではあるまいか(笑)。そうなると、トランプ報道は「占い」の範疇(はんちゅう)? そう考えれば「大統領執務室の本棚に置かれたルーズベルト像」に"占いのヒント"が隠されていてもおかしくない。
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 ルーズベルト家はトランプ家と同じように裕福だった。ユダヤ系オランダ人が起源で、1649年にクラウス・M・ローゼンベルツという人物がオランダから移住、2代目ニコラスがファミリーネームをルーズベルトと改め、その時代に家系が二つに分かれた。一方がセオドアの家系。もう一方がフランクリンの家系である。
 一族は19世紀に板ガラスの輸入などの世界的なビジネスで大成功した。どこか金満不動産業者のトランプ一家と似ている。
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 そのお金持ちの倅(せがれ)・セオドア・ルーズベルトが政治家を目指した理由は長くなるのではしょるが、1901年、ウィリアム・マッキンリー大統領が暗殺され、副大統領のルーズベルトが42歳という若さで大統領に就任した。
 トランプ氏は、まず彼の「強運」を尊敬している。もちろんルーズベルトの仕事も高く評価している。海軍力を背景に、パナマ運河の完成の後ろ盾となった。まさにアメリカ第一主義だ。
 日露戦争の講和を仲介し、その功績でノーベル平和賞を受賞したこともあるが、トランプ氏にとっては、これはどうでもよいかもしれない。
    ×  ×  ×
 トランプ氏が一番、尊敬していることは「大統領令」である。在任中、ルーズベルトは1081回もの大統領令を発令した。大統領絶対主義である。
 これは大統領令を活用したリンカーンをはるかに上回る。今のトランプ氏はルーズベルトに続け!とばかり「大統領令の大安売り」である。
 もう一つ、ルーズベルトのスローガンを思い出した。
 Speak softly and carry a big stick「穏やかに話し、大きな棒を運ぶ(大口を叩(たた)かず、必要な時だけ力を振るう)。
「棍棒(こんぼう)外交」と呼ばれるものだ。
 米英戦争以来の米国外交方針の国是となっていたモンロー主義に基づき、西半球に積極的に介入したルーズベルトの外交政策だ。砲艦を並べて欧州諸国が介入するのを妨げる。砲艦をちらつかせる権利を持ち続ける「脅しの外交」。
 ルーズベルト外交を勉強すると「トランプの次の一手」が分かるような気がする。

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