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テレビ探偵
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「あさ」の真逆にびっくりぽん!

2015年11月 8日号

泉麻人のテレビ探偵 連載78

 NHKの朝ドラはいつも書き頃にちょっと迷うのだが、まぁそろそろいいだろうか。今期の「あさが来た」、利発な名子役(鈴木梨央)が急成長して、いまの波瑠に変わったときは、けっこう乱暴なキャスティングだなぁ......と思ったけれど、ヒロイン・あさを演じる波瑠という女優、ぽわぁーっとしているようで、案外腰が据わっている。
 去年クドカンが書いていた「ごめんね青春!」を観ていたときから、どことなく夏目雅子に似ているな、と思っていたのだが、なるほど彼女、伊集院静の自伝的小説『いねむり先生』のドラマ(2013年・テレビ朝日系)で夏目モデルの役をやっていたのだ。あそこまでの大器になるかどうかはともかく、新人にありがちな"いっぱいいっぱいな感じ"がしない。たとえば件(くだん)の「びっくりぽん」ってフレーズ。こういう流行狙いの造語って、どうしてもあざとさを感じてしまうものだが、彼女がゆるい関西イントネーションで発するそれは、嫌みがない。言わされているような無理もなく、自らのキャラに合った言葉として消化している。しかしコレ、日常の場で使うのにはまだ勇気がいるね。おそらく、一番使いやすいのは麻雀(マージヤン)でポンする場面。
「ソレ、びっくりポンや」
 麻雀場は軽い言葉が面子(メンツ)に伝染しやすい環境でもある。NHKさん、ハヤらせたいなら、全国の麻雀協会に仕掛けるべきですぜ。
 さて、この「びっくりぽん」はいいとして、僕が引っかかったのは、先ごろ、あさの両替屋に新選組の土方歳三がやってきて、腰の刀をちらつかせながら強引に借金を要求したときのこと。両替屋の命は信用であることを主張するなか、こんなセリフが放たれた。
「刀と信用は真逆(まぎやく)のもんだす」
 刀と信用の比喩はともかく、ここで"真逆"ってどうなのよ? まさか(真逆)幕末の大阪で流通していた言葉ではないだろう。びっくりぽんは許せても、こっちはどうにも違和感があった。マギャク、ナニゲ、ハンパナイ......時代劇コントは別として、この種の巷(ちまた)の若者言葉を取りこむと、話全般が安くなる。もったいない。
 波瑠のお相手、のんきな遊び人亭主を演じる玉木宏は、前に「きょうは会社休みます。」のときにも書いたが、ひと頃の細川俊之調の2枚目半が板に付いてきた。そのオヤジをやる近藤正臣もいまや関西喜劇に欠かせない役者だし、まもなく鶴瓶演じる豪商が加わるというから、いっそうコテコテ喜劇路線は強化されていくのだろう。そう、「民王」でスキンヘッドの怪刑事(時折ハサむ妙なイントネーション言葉で笑わせる)を演じていた山内圭哉(たかや)の起用もうれしい。
 お気楽なあさの夫婦とは対照的に、姉の宮崎あおい(はつ)が嫁いだ家は暗く殺伐としている。その元凶である亭主役、柄本佑(えもとたすく)の薄気味わるい感じがとてもいい。マザコンのこの男が母親の萬田久子に促されるように嫁いじめする場面は、朝っぱらから不愉快ながら後を引くものがある。

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