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テレビ探偵
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SMAPのいる「のど自慢」風景

2015年10月18日号

泉麻人のテレビ探偵 連載75

 週ペースの番組のなかで、「NHKのど自慢」がおそらく最長寿ということになるだろう。終戦直後のラジオで始まって、テレビも開局の年(昭和28年)から放送されているのだ。ま、これまで熱中して眺めたことはないけれど、日曜日のジムの休憩室のテレビでこれがなんとなく流れているのを瞥見(べつけん)することはある。
 そんなのど自慢にSMAPが出演した、という情報を知ったのは夏の終わり頃だったか......先日(9月26日)スペシャル版として放送されていた。録画したのを倍速で流し見しようか、と思っていたら、これが実に面白い。彼らが訪ねる町は岩手県の山田町。東日本大震災で多大な津波被害を受けた土地だ。SMAPの面々は予選から審査に立ち合い、出場者たちの日常を取材する過程が歌の合い間に挟みこまれる。
 さて番組は、キンコンカーンという鐘とともにおなじみのテーマ曲が流れてスタートする。のどかな地方の公会堂のステージに、出場者や座付きバンドと一緒にあの5人が立っている、という絵には当初違和感をおぼえたが、なんだか段々と収まりが良くなってくる。司会をする小田切千というアナウンサーはくだけたバラエティー向きの人で、香取慎吾をパートナーに番組を仕切る。しかし、こういうシロートさんを相手にやりとりするときの香取クンは本当に欽ちゃんっぽい。「仮装大賞」で萩本欽一のシロートいじりの術を学習したのだろう。
 ジムのテレビでチラ見していたときから気づいていたことではあるが、いつからか順番待ちや歌い終えた人も背後の席でキマリの振り付けをして、歌っている人を盛りたてるようになったのだ。個人的にはこういう演出、好みではないのだが、それだけシロートさんが場馴(な)れしたということなのだろう。昔のように、舞いあがっちゃってまるで歌になってない、みたいな出場者はまずいない。
 ここにSMAPのメンバーも出場者に混じって腰掛けているのだが、歌い手背後のよく見える位置にいる木村拓哉が、鐘の数(判定)に敏感なリアクションを取るのがおかしい。とくに自らダンスを教授した女子グループの「チューチュートレイン」(エグザイル版)が鐘2つで中断されたときには、後ろの鐘奏者の所に歩み寄って「サビまで聞かせろよ!」と文句を付けていた。この一件、ネットニュースの見出しには「キムタク、マジギレ」と出ていたけれど、これはもちろん彼ならではの小芝居だろう。
 出場者のなかには昭和8年の三陸大津波で幼くして母や姉妹を失ったおばあちゃん、そして4年前の津波で妻子を失った漁師の男が「雪散華」なんて演歌を歌う。Tシャツにステテコ、ハチマキ姿のふだん着で、歌い終えた後「緊張した。飲んで歌うから、いつもは」なんて照れ隠しにいう一言にジンとくる。執拗(しつよう)な泣かせもなく、震災悲話をサラリと扱っているところが清清(すがすが)しい。微妙に古臭い感じのバンドの前で「世界に一つだけの花」を歌うSMAPも案外なじんでいた。

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