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サンデー時評
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そして、野党も動き出した 「立憲民主党」?いいじゃない

2015年10月18日号

倉重篤郎のサンデー時評 連載70

 米ソ冷戦は、1955年の左右社会党統一、自由、民主両党の保守合同(自民党発足)という、いわゆる55年体制を生み出した。
 米ソ冷戦の終結は、93年の同体制終焉(しゆうえん)(細川護熙政権誕生)と翌年の連立時代幕開けの契機となった。
 では、中国台頭と米国後退という今の国際環境の変化は、国内政治体制をどう変えるのか。
 安倍晋三首相率いる自公政権は、米国後退の空洞を日本が軍事的に代替、憲法との整合性は二の次にする、という選択肢(今回の安保法制強行採決)を採った。
 このことで自公連立はどうなるか。「毒を食わらば皿まで」的結束強化に向かう一方、木に竹を接いだ不安定感を残すであろう。いずれのベクトルが勝るかは不明だが、軽減税率騒動という形で起きている自公間の亀裂は、後者も無視できないことを物語っている。
 野党側にも変化の兆しがある。
 動きの速かったのは、共産党である。安保法制が成立した9月19日、中央委員会総会を開き、二つのことを決めた。安保法制廃止、立憲主義回復を目的にした国民連合政府の樹立と、そのための国政選挙での選挙協力の実施である。
 後者の選挙協力方針がニュースとして報じられた。共産党といえば、国政選挙でいえば全選挙区、地方選でもほぼすべての首長選で独自候補を立ててきた自立自尊、ある意味排他政党の典型だったが、それが来夏の参院選や次の衆院選では、選挙区によっては独自候補を見送りその基礎票を野党各党にお分けします、というのだ。
 共産党の基礎票は馬鹿にできないものがある。例えば、13年の参院選比例区での得票総数は515万票。756万票だった公明党の3分の2である。衆院の295小選挙区で割ると、1選挙区あたり約1万7000票という計算だ。自民党が公明・創価学会票で2万5000票の竹馬に乗っているとすれば、野党もまた別の高下駄(げた)をあつらえてもらえるというのである。
 竹馬と高下駄とはどっちが使い出がいいか。組織票としての総量、戦闘力は公明・学会票に分がある。だが、共産票のモラルも高い。必ず投票所には足を運ぶし、小選挙区ではほぼ100%、反自公の野党に1票を投じるだろう。

 ◇共産党が連立政権を提言 時代の変化を受け止めた現実的な安保対案を

 2009年の衆院選がいい例だ。この時も共産党は独自候補擁立は約半分の145選挙区にとどめ、結果的に自公政権の崩壊、民主政権誕生のアシストをしている。
 もちろん、選挙協力はギブ・アンド・テークであり、共産候補が勝てそうな選挙区については各野党の協力を求めるであろう。ただ、参院選では東京、大阪など各党競合の大選挙区以外は共産独自候補を立てる余地はなく、共産側のギブ・アンド・ギブという形になろう。また、公明・学会の自民への選挙協力が、小選挙区ではギブするが、比例区ではテークすることを交換条件(後援会名簿の提供など)にしているのに比べると、後腐れのないおいしい支援ともいえる。
 共同通信が14年衆院選得票数をベースに試算したところ、来夏の参院選でこの野党選挙協力が実現すると、8選挙区で野党票が自公票を上回り、衆院選では295の小選挙区のうち74選挙区で勝敗が逆転する。アンチ安倍、野党協力に追い風が吹けば、もっとドラスチックな結果にもなるだろう。
 共産党はなかなかのカードを切ったものだ。「清水の舞台から飛び降りた」(志位和夫委員長)の言もむべなるかな、である。
 ただ、ここには国民連合政府の樹立という、もう一つのニュースがある。野党に徹してきた共産党が初めて連立政権入りを明言した、と受け止めるべきではないか。
 私にとっては、むしろこちらの方が興味深い。共産党が議会制民主主義を通じた穏健な政権交代路線に転換して久しい。政策の中身も共産主義というより社民主義に近いものになっている。世界を見ると、仏でも伊でも共産党が与党としての経験を積んでいる。
 もちろん、共産党アレルギーというものがあり、イタリアの「オリーブの木」のような共産党参加の連立政権がすぐにできるとは思えない。現時点では、票はいただくが連立入りはご免被る、という人たちが野党の大半であろう。だが、それもまた共産党が政策面で協調すればわからない。野党再編の底流が動き始めた感がある。
 変化は、野党第1党・民主党の中でも起きている。安保国会での完膚なきまでの数での敗北と、支持率が全く好転しないことから、新党として出直すか否か、野党再編はどの政策を軸にどの政党まで広げるか、が争点になっている。
 いくつかの動きの中の一つとして、9月24日、岡田克也代表が大畠章宏氏のグループ約10人から意見聴取する会合があった。
 大畠グループからは、この際、立憲主義を標榜(ひようぼう)する新党を作り、そこに野党勢力を結集、安保法制を廃案に追い込むべきだ、との意見が表明され、「立憲民主党」との新党案も披露された、という。
 かつて立憲改進党という政党があった。明治期の自由民権運動の代表的政党で、大隈重信が初代党首であった。その在野性、穏健主義の気風をまとい、民主党の基本政策を維持したまま安倍政権との最大の違いとして立憲主義を冠する名称だ。いいじゃないですか。
 ただ、野党陣営には二つ注文がある。安保法制廃案はいい。だが、廃案後に日本の外交・安全保障をどうするのか。時代の変化を受け止めた現実的で包括的な代案を作るべきだ。もう一つは共産党の変化を生かすことである。安直な排除は産みの苦しみを通じた新しい価値の創造にはつながらない。共産党の外交安保路線には意外や、今後保守政治が克服すべき従米路線に対する根源的批判がある。

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