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テレビ探偵
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ゴムやきそばを探す三宅裕司の旅姿

2015年10月11日号

泉麻人のテレビ探偵 連載74

 教養バラエティーのようなジャンルの番組を観ていると、「あースタジオがジャマだなぁ」と思うことがある。取材のVTRだけで充分番組は成り立つのに、例のワイプでスタジオゲストの表情やコメントが被(かぶ)さってくる。たとえば半月くらい前にやっていた日テレの「高校生クイズ」。白熱したクイズシーンだけ観せてくれればいいものを、間で束の間スタジオの有吉弘行らタレントのリアクションが入る。気の利いたウンチクでも語るならまだ意味があるけれど、ほぼ「スゲー」とか「スッゴーイ」の感嘆語しか発していなかった。
 そんな地上波のバラエティーに呆(あき)れてBSにチェンジすると、ローコストならではの工夫が感じられる番組に出くわすことがある。
 BS日テレの「三宅裕司のふるさと探訪」もそういう番組の一つ。ハヤリの"ぶらり系散歩"ではあるけれど、三宅ならではの散歩モノを作り出そう、という意欲が感じられる。
 番組の主旨は、都会(東京・神田神保町あたり)で生まれ育った三宅さんが、視聴者から寄せられた"田舎自慢"の手紙をよりどころに見知らぬ地方を訪ねる―というもの。視聴者の手紙を糸口にしている点は火野正平の自転車旅にも似ているが、感動的な思い出が語られるわけではなく、ちょっとしたローカルフードや奇妙な物件を目当てに、特急の停まらないような町へ出向いていく。千葉の久留里(くるり)や岐阜の可児(かに)、まず観光客の行かない地味な土地を三宅裕司がオフっぽい感じで歩いている様がいい。先日の2時間スペシャルは"京都"と銘打ってはいたが、王道の伏見稲荷をちょろっと訪ねた後、手紙に指示された福知山へと向かう。文中で福知山名物と自慢されている"ゴムやきそば"なるものを味わうためだ。
 どーってことない商店街で見掛けた地元のギャルなんかに、三宅はローテンションで話しかける。ゴムやきそばについての地元ギャルの反応を確かめて、食べられる店への道順を伺う。そこで唐突に飛び出した、地元のナンタラ医院の場所などを肴(さかな)に話を転がすあたりこの人のお家芸だ。
 件(くだん)のゴムやきそばはゴムのようなシコッとした食感のソースやきそばのようで、関西の場末によくある質素なお好み焼屋風の店の佇(たたず)まいも魅力的だった。この後、山間部に存在する"超巨大ブランコ"というのを探しに行くのだが、途中勧められた百体観音というのを地味な山寺へ見に行っているうちに雨が降ってくる。行きあたりばったりの旅の妙味がイヤミなく表現されているのは、三宅のパーソナリティーの力だろう。
 最後に立ち寄った舟屋の港町・伊根で"干しなまこストラップ"という名物ミヤゲを買うシーンが印象的だった。店主はテレビ取材なれしているのか、「スタジオ用にもう少しあげましょう」とばかり、ストラップをどっと差し出そうとする。
「この番組、スタジオないんですよ」とディレクター。ふだんスタジオ側にいることの多い三宅さん、なんだか実にうれしそうだった。

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