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テレビ探偵
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ワニとカマキリ。民王は役者の顔がいい

2015年9月 6日号

泉麻人のテレビ探偵 連載70

 テレビドラマの原作に使われる作家にもハヤリがある。草創期から60年代にかけての頃は獅子文六、石坂洋次郎。70年代あたりからの社会派ドラマで脚光を浴びた山崎豊子や城山三郎。もっとも半世紀以上、サスペンス物の看板の座にいる松本清張みたいな怪物も存在する。近ごろはマンガ原作も増えたけれど、本屋の文芸コーナーで目につく人気作家のなかで、とりわけテレビ界でひっぱりだこなのは池井戸潤ということになるだろう。
 業界では"イケジュン"みたいな符丁も定着しているのかもしれないが、「半沢直樹」に代表されるようなキャラが明快に描かれた話が多い。
 いまどきも「花咲舞が黙ってない」と「民王」の2作が放送されているが、僕が贔屓(ひいき)にしているのは後者。たみおう、と読むこのドラマ、テレ朝金曜夜11時台という深い時間帯なのだが、9時台に持ってきてもどうにかなるようなクオリティーに仕上がっている(ま、もはやどっちがいい時間帯なのか、よくわからない)。
 強欲な政治家の父親とそのダメ息子がひょんなきっかけで入れ替わってしまう、という設定は珍しいものではない。僕の世代ではまず大林宣彦監督の青春映画「転校生」(82年)を思い出すが、ドラマでも宮藤官九郎脚本の「ぼくの魔法使い」(古田新太と篠原涼子が入れ替わる)とか、ヤクザの高橋克実とイケメン草食系の松田翔太が入れ替わる「ドン★キホーテ」とか、いくつか思いあたる。
 まぁしかし、こういうのはいまデザイン界で話題の"トレース"とか"パクリ"って話ではなく、"入れ替わり物"みたいな一つのジャンルと認めていいだろう。そしてこの「民王」、父親の遠藤憲一と息子の菅田(すだ)将暉の姿のコントラストが実に楽しい。大仰な舞台劇調の演出に、濃いめの風貌がよく合っている。エンケン(この略称、僕の世代は「カレーライス」の遠藤賢司だったのだが)さんは劇中でも"ワニ顔"と呼ばれているが、確かにアリゲーターの顔をタテ長にしたようなハ虫類系風貌をしている。僕は彼が「Dr.倫太郎」で細長い指先で細長いエクレアをつまむシーンが好きだった。
 エンケンの顔のポイントが口もとだとすると、菅田クンは太い弓形の眉が特徴的な青年だ。ワニに対して何か動物を当てるなら、さしずめカマキリあたりかな? ちなみにこの二人、NHKで先日やっていた、さだまさしの自伝的ドラマ「ちゃんぽん食べたか」でも父と子なんだよね......。この辺、意図的なキャスティングなのだろうか。
 冷静な秘書役で二人の間に入る高橋一生も効いている。医者とか秘書とか、上品なインテリがハマる役者だが、僕は彼の正体をよく知る前に「タモリ倶楽部」でご一緒している。都バスを貸し切って港区の坂めぐりをするという企画だったが、彼は赤坂出身ということで呼ばれたらしい。
 TBS裏の急峻(きゆうしゆん)な坂道を走っていたとき、「この辺が子供の頃の遊び場でした」と静かに語っていた。
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 ■人物略歴
 ◇いずみ・あさと
 1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、テレビ雑誌編集者を経て、フリーのコラムニストに。東京を中心にした街歩き、現代風俗などを中心に執筆。近著は『還暦シェアハウス』

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