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テレビ探偵
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「ど根性ガエル」の70年代風俗

2015年8月16日号

泉麻人のテレビ探偵 連載67

「ど根性ガエル」はなんとなく観てしまっている。番宣スポットや紹介記事を見かけたときから、へっクダラネーナ......とは思っていたけれど、いかにも日テレらしいバラエティー風味のドラマになっている。原作やアニメで中学生だった主人公たち(ひろしや京子)の16年後、つまり30前後のオトナになった姿を描く―というアイデアは、数年前のソルマックCMの方が先とはいえ、"ピョン吉の老化"を一つのテーマにするあたり、さすが岡田惠和(脚本)だ。しかし、思えば以前、同じ松山ケンイチ主演でジョージ秋山の「銭ゲバ」をドラマ化したのも、日テレのこのチームなのだ。
 個人的に、ひろしの顔のイメージは生田斗真だったんだけど、マンガキャラ慣れした松山もわるくない。30過ぎて、ダメなニート生活を送るひろし青年の設定には、少なからず渥美清の寅さん、の像が意識されているように思われる。ロケ映像にも、曳舟(ひきふね)や立石(たていし)あたりの素朴な商店街と家並みの先に東京スカイツリーが映りこむ。こういう下町舞台の人情喜劇に、いつしかスカイツリーは往年の"お化け煙突"的シンボルとして使われるようになった。
 ドラえもんのジャイアンに当たる乱暴者のゴリライモは、成功してパンメーカーの社長に納まっている。格闘家系の巨漢俳優を使う手もあるのだろうが、ここでは新井浩文が"更生した元ヤンキー"風のゴリライモをクールに演じている。
「ゴリラパン」の宣伝カーから流れる♪なんでゴリラのパンなのか~って奇妙なCMソングが耳に残る。
 ガールフレンドの京子ちゃん=前田敦子のキャスティングは、トヨタCMのジャイ子からの流れを感じるが、元タカラジェンヌ・白羽ゆりのよし子先生ってのはちょっと奇抜な配役だ。そして、ハマっているといえば、ピョン吉の満島ひかり。そもそも器用な人とは思っていたけれど、なんだか「鉄腕アトム」の頃からアフレコしていたベテラン声優のように、声がアニメになじんでいる。僕の子供時代、人間ドラマに石ノ森章太郎のアニメを合体させた「宇宙人ピピ」って番組があったけれど、このピョン吉の動きなどを眺めていると、つくづくアニメやCG技術の進化を感じる。
「ど根性ガエル」は「鉄腕アトム」や「宇宙人ピピ」よりはちょっと後、70年代初めにまだ創刊まもない『少年ジャンプ』で連載が始まって、やがてアニメ化された。僕の手元に初期のコミックスがあるのだが、原作は初回のド頭でひろしが石につまずいて転倒、下にいたカエルが胸に張りついて、わずか5コマ目でピョン吉はできあがる。
 京子ちゃんは10話目あたりで転校してくるのだが、フルネームは吉沢京子。この名、当時「柔道一直線」のマドンナ役などでブレークしていた女優・吉沢京子が元ネタに違いない。すると「ど根性」ってのもハヤリの"スポ根"モノのもじりかもね。そういえば、ピョン吉服のデザインもあの頃ブレークしたスマイルマークのTシャツに似ている。
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 ■人物略歴
 ◇いずみ・あさと
 1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、テレビ雑誌編集者を経て、フリーのコラムニストに。東京を中心にした街歩き、現代風俗などを中心に執筆。近著は『還暦シェアハウス』

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