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青い空白い雲
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国民を子供扱いする「憲法マンガ」で自民党は死ぬ

2015年8月 2日号

牧太郎の青い空白い雲 連載531

 庶民は大きな声で「政治家は馬鹿ばかり」と言って憚(はばか)らない。何を言ってもカネはかからないから、貧乏人は何でも言う。もちろん、そう嘆いてみても、貧困・差別の世の中はまったく変わらないから、酒の肴(さかな)にもなりはしない。
「馬鹿」と言われた政治家は? といえば......内心「お前のほうが馬鹿だ!」と思いつつもジッと我慢する。選挙があるから「有権者は馬鹿だ!」とは口が裂けても言えない。
 だから賢い政治家は、有権者を馬鹿扱いすることはまずしない。それがルールだ。
 ところが、安倍さんはそのルールを破った。自民党インターネット番組の熱心な視聴者まで「安倍首相に"馬鹿扱い"された」とカンカンなのだ。
    ×  ×  ×
「『安倍は生意気だから、今度殴ってやる』という不良が出てきた。ケンカの強いアソウさんと一緒に帰ったら、3人ぐらい不良が出てきて、いきなりアソウさんに殴りかかった。私もアソウさんを守る。これが今度の安保法制でできることです」
 安倍さんはこんな例え話をした。
「一緒にいたアソウさんは助けるが、自宅を強盗に襲われたスガさんは、家まで行って助けることはできない」
 要するに例え話で、「安倍さん(=日本)自身に危機が迫っていないため、集団的自衛権の発動要件である存立危機事態には該当しない」と説明したかったのだろう。
 ご本人は「見事な例え話だろう」と、ご満悦だったそうだが、視聴者はとても納得できない。
「俺たちは馬鹿ではない、小学生ではない。自民党のインターネット番組を見る人間は自民党贔屓(びいき)。そうでなくても、政治に関心が深い。それを子供扱いするなんて......せめて、安保法制が憲法に違反しない理論的根拠を示さなくては、一国の指導者じゃない」
    ×  ×  ×
「アレも子供だましだ」と、自民党員である某氏が指摘するのは、4月に自民党が発表した憲法マンガ『ほのぼの一家の憲法改正ってなぁに?』のことである。
 登場人物は、ほのぼの一郎(いちろう)(35歳)・優子(ゆうこ)(29歳)夫妻、その子・翔太(しようた)(2歳)、一郎の父・司郎(しろう)(64歳)と祖父・千造(せんぞう)(92歳)。憲法改正に不安を持つ優子に、司郎、千造が憲法について説明する設定である。
 例えば、27ページはこんなふうである。
 一郎が「公共の福祉って?」と質問すると、千造が「公益。つまりはみんなの利益ってことじゃ」と答える。説明を聞いていた優子が「公益に反してなきゃ個人の幸福を追求するためなら何でもやっていいってこと?」と聞く。
 すると、司郎が「基本的人権があるからといって何をしてもいいわけじゃない」と言い出し、それを受けて、一郎が「そうでしょうねぇ、みんながワガママを主張したら、社会は壊れちゃう」。千造が「今の日本の憲法は個人主義的といえるのう」と現憲法を批判する。
 これを聞いた優子が司郎の胸ぐらを掴(つか)みながら「日本じゃ国の安全に反してもワガママOKってこと!?」と大声を上げる。
 こんなストーリーである。当方もびっくりだ。自民党は「基本的人権=ワガママ」にしてしまっている。「個人の尊重」という大事な概念を平気で歪曲(わいきよく)。戦前の全体主義に逆戻りしてみせている。
    ×  ×  ×
 前出の某氏は「国民を馬鹿にするのも休み休みしろ!」と言った。保守本流にいた「自民の論客」だった元議員が揃(そろ)って「自由と民主主義を標榜(ひようぼう)する自民党は死んだ!」と嘆く。報道機関を懲らしめる!と大声を上げるネット右翼のような議員が跋扈(ばつこ)する安倍自民党。基本的人権をワガママと言い、懲らしめようとする自民党。国家主義に一直線!の自民党。
 愛想が尽きたのだろう。
「自民党の良識派」が離れていく。安保法制が成立しても、この間、再三、馬鹿扱いされた日本人が、安倍自民党を見捨てるのは、もはや時間の問題のような気がする。

 ◆太郎の青空スポット 5夜連続で花火を!
 今年も富士山の麓(ふもと)、富士五湖では5夜連続の花火大会。8月1日(土)の山中湖の「報湖祭」に始まって、2日(日)西湖・竜宮祭(灯籠(とうろう)流しもあり)、3日(月)は本栖(もとす)湖・神湖祭、4日(火)は 精進(しようじ)湖・涼湖祭(ボート供養、音楽イベントあり)。最後の5日(水)の河口湖・湖上祭は9000発。400メートルのナイアガラの滝が呼び物。それぞれ、個性的だ。ちょっぴり箱根山の動きは心配だが、この地の別荘族は贅沢(ぜいたく)にも5夜連続の花火を堪能できる。夏、いよいよ本番だ。

 ◇毎日新聞夕刊にコラム「大きな声では言えないが...」を連載中

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