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そのやせ我慢、良かった 「政治と金」に3論点

2015年3月22日号

 再び「政治と金」の季節か。
 閣僚3人目である西川公也農相の辞任は、安倍晋三政権にとって打撃だ。政権としてはこれ以上の出血は避けたいところだ。予算早期成立と4月の統一地方選が控えている。民主党幹部の不祥事探しが行われている、ともいう。何とか泥仕合に持ち込み、後は数の力で押し切らん、という局面である。
 あえて野党には、政治と金は国会論戦の脇役であって主役は政策論争であるべきだ、との書生論を繰り返したい。醜聞追及はわかりやすくメディアの扱いもいい。ただ、政治における力の配分を間違うべきでない。政権が進めるアベノミクス、安保法制、エネルギー政策の是非こそが問われるべきであり、国会論戦の中でそれ以外の道を示すのが野党の仕事である。
 とはいうものの、この際政党交付金について2事例に言及する。
 政党交付金とは、選挙制度改革とセットで導入されたもので、政治家がリスキーな金集めをしなくてすむよう各党へ交付される税金のことである。国民1人当たりコーヒー1杯分にあたる250円程度の拠出ということで、(×1億2千万人で)総額320億円の税金が毎年各党に交付されている。
 交付額は、政党の規模(国会議員数と直近選挙での得票数)次第。共産党以外の政党にとっては、それがなくてはとても党運営が立ちゆかない背骨みたいなものだ。
 第1事例は、昨年暮れのみんなの党解党に伴う約10億円の交付金返還事件である。政党がいったんもらった税金をまっとうに返すのは前代未聞である。事件と呼んで差し支えない。なぜ、いくら、どうやって返還するのか。当時の党首浅尾慶一郎衆院議員に聞いた。
 同党が、創立者の渡辺喜美氏の金銭スキャンダルや路線対立が原因で分裂し、最終的に解党に至ったのは昨年12月のことだった。
 この時点で同党の交付金残高は現金で16億円。一方、当時同党議員は衆参合わせて20人を数え、この資産の処分法が関心事となっていた。「20人で割り、1人8千万円山分け」論も出たが、「税金の無駄遣いをなくすという党是からするとあまりにさもしい」と考えた浅尾氏は、解党に先立つ記者会見の席上「(必要経費以外は)全額国庫に返還します」と宣言した。さすがにこの正論には反発なく、以下返還がまとまっていく。

 ◇4人でゼロが5人なら3億円という小沢マジック...

 まずは、必要経費である。突然の解党で路頭に迷う党職員20人に1年分の給与前払いで1億5千万円、国会議員には公認料代わりに1人当たり2千万円で(×20人で)4億円。この5億5千万円を16億円から差し引き、10億5千万円を返還することにした。
 ただし、一応5年は続いた政党である。予期せざる債務、借金が出てくることに備えるため、特別目的会社(SPC)を作り3億5千万円をプールした。債権者向けに現在公告中で、浅尾氏の予想だと使うのは1億円程度。となると、8億円は総務省から返還命令が来た時点で、SPCの2億5千万円は期限が来た段階で国庫に返せる段取りが整ったことになる。
 細かい金の話になったが、解党といういわば政治的自殺に等しい修羅場での一陣の涼風ともいえないか。浅尾氏は「政治に金がかかるのは事実だが、ある種やせ我慢も必要なのではないか」という。
 第2事例は、衆院選後にできた政党「生活の党と山本太郎となかまたち」である。国会議員が4人に減り政党要件を失った生活の党の小沢一郎氏が、要件5人をクリアするため、一匹狼(オオカミ)だった山本参院議員に合流を申し入れた。
 一人ぼっちの政治活動に限界を感じていた山本氏にも悪いプロポーズではなかった。山本氏によると、合流条件から話し合った。
 山本氏「党が賛成でも1人反対することがある」
 小沢氏「党議拘束なしでやってきた。心配はいらない」
 山本氏はポストについても要請した。「共同代表にしてください。他のポストも一ついただきたい」
 役付きになってテレビ討論会の場で脱原発やその他の政策を訴えもっと発信したかった。共同代表はOK、政審会長の肩書も得た。
 党の名称についても提案した。「太郎と一郎」ではどうか。小沢氏は、ダブル選挙も取りざたされる中、立候補者名が入った党名は選挙に使えなくなると指摘、冒頭の党名に落ち着いた、という。
 そこで、山本氏に交付金の割り振りについて聞いた。「ズバリあなたはいくらもらうんですか」
「確定してないが、1000万円ちょっとぐらいじゃないか」と率直に答えてくれた。5人の政党だと多分年間3億円程度の交付額か。4人でゼロが、5人になれば3億円。その必要経費が1000万円であれば、党名でも何でも譲ることが可能だろう。小沢マジック、いまだ健在なり、か。
 もちろん、政党になるメリットは金だけではない。あらゆる政治活動に関わってくる。「金も大事だが、僕はそれだけではない。やはり66万(票)人に背中を押していただいたわけだから発言する機会を多くする必要がある」という山本氏の気持ちもよくわかる。
 いずれにせよ、政治には金がかかる。永遠に金の問題からは逃げられない。であるならば、思い切ってすべての膿(うみ)を絞り出す覚悟で1年間限定で「政治と金」の問題点と処方箋を徹底的に論じてみないか。自民党がその気になれば野党は断れない。衆院には「政治倫理の確立及び公選法改正に関する特別委」という格好の場がある。
 IT時代である。補助金受給企業、団体のリスト公表ができないか。政党支部への企業団体献金を規制できないか。30年続いた政党交付金の功罪をどう検証し変えるのか。この三つで永田町は変わる。
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 ■人物略歴
 ◇倉重篤郎(くらしげ・あつろう)
 1953年7月東京生まれ。78年東京大教育学部卒、毎日新聞入社、水戸、青森支局。政治部、経済部。2004年政治部長、11年論説委員長、13年専門編集委員。

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