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リーマン・ショック10年  これからの10年を勝ち抜くマネー戦略 日本経済好景気の正体

2018年10月21日号

 ◇日経平均はバブル後最高値を更新、地価も上昇中...

 10年前のリーマン・ショック直後、企業業績は急激に悪化し、失業者が街にあふれた。その後、政権交代、東日本大震災、アベノミクスと激変が続いたが、今は株価や地価が27年ぶりの高値。この10年で大きな転機を経た人たちに「今後10年の日本経済」を聞いた。

 ウォール街の名門投資銀行、リーマン・ブラザーズが突如、経営破綻したのは2008年9月15日だった。金融関係者はパニックに陥り、世界中の株価は急落。日経平均株価も1万円を割り込み、輸出企業は非正規従業員の解雇に走った。翌年には完全失業率が5・5%に達し、日本経済はマイナス成長の屈辱に甘んじた。
 10周年の節目から数日後、国土交通省は「全国基準地価が27年ぶりに前年を上回った」と発表した(全用途平均)。さらに9月末には日経平均が2万4000円の大台を超え、これも27年ぶりの高値だ。好景気はいつか必ず終わる。地価や株価の高値は"終わり"が近いことを示しているのか。
 この10年の激変を身をもって体験した人なら、日本経済の行方を占えるのではないか―そこで真っ先に思い浮かんだ人物がいる。9月下旬、「個人投資家は『忍び寄る危機』に備えるべきだ」と題した記事をネット(「東洋経済オンライン」)に載せた森永康平氏(33)だ。その論旨は「米国の利上げが完了した1~2年以内に金融危機が起きた」というパターンが繰り返されれば、来年以降に金融危機が再来する可能性が高い、というもの。
 リーマン・ショック当時、森永氏は証券会社などを傘下に持つ金融大手SBIホールディングスの若手社員だった。日本株アナリストやインドネシア駐在員を務めた後、米系投資信託運用会社、オンライン証券、金融と情報技術(IT)を組み合わせた「フィンテック」企業などを経て、今年6月、「マネネ」を創業。金融教育をする会社だという。
「金融ビジネスに10年関わって痛感したのは、日本人はお金の知識がなさすぎることです。医師や弁護士といった知的エリートも、自分のお金の運用では素人同然。『毎月分配型投信のトルコリラ・コース』のような明らかにリスクが高く、メリットに乏しい金融商品を買い、スルガ銀行の乱脈融資で被害者が続出した『かぼちゃの馬車』のような不動産投資にのめり込んでいる。自分ができることは金融教育だと思った」
 個人的な理由もある。この10年の間に結婚し、3児の父になった。育児休暇中の妻は近く職場復帰するため、「子育てをするには、会社員より起業したほうがいい」と考えたという。
「起業と同時に三つの会社のCFO(最高財務責任者)を兼業することにしました。金融機関との折衝などを担当しています。3社から得る報酬を合算すると会社員時代と同じぐらいの稼ぎになります」(森永氏)

 ◇高齢化をイノベーションの種に

 副業解禁や在宅勤務といった柔軟な働き方が一段と広まり、今後は「個人が会社に縛られない時代」になると森永氏は考えている。

「分かりやすい例はUUUMです。昨年、東証マザーズに上場した際は、証券最大手の野村證券が主幹事を担っています。近未来の働き方を示唆しているから注目されているのでしょう」
 UUUMは「ユーチューバー」に芸能事務所のようなサービスを提供する会社。ユーチューバーとはインターネットに自作動画を投稿し、広告収入を得る人のことで、子どもの「憧れの職業」の上位に入る。
「たとえ金融危機が起きても、個人は才覚を生かして多様な収入源を確保する。それが当たり前になる時代になると確実に言えますね」(森永氏)
 次に会ったのは作家の猪瀬直樹氏(71)。バブル経済前夜の1986年、土地神話と天皇家の関係を鮮やかに解き明かした『ミカドの肖像』(小学館)を書いた。10年前は東京都副知事、2012年に都知事に就任した猪瀬氏。平成末期の時代状況をどう見るのか。
「五輪の招致をかなり本気でやったのは、未来を指し示す必要があったからなのです。リーマン、震災のダブルパンチだよね。『もう日本はダメなんじゃないか』というすごい閉塞感、自信喪失があった。2020年という光り輝く目標があれば、みんなそれに向けて進めるだろう、と。五輪を招致すればインバウンド(訪日観光客)は絶対増えるということも全部考えていた。北京、ロンドンの例からも明らかだったからね」
 国民がスポーツに親しむきっかけとし、国の医療費を削減する狙いもあった。猪瀬氏自身、64歳の時に糖尿病の疑いがあると指摘され、ランニングを始めた。1年半後には東京マラソンを完走し、海外で招致活動をしながらランニングをしてアピールした。
「毎月50キロ走って病気が治ったから。今71歳だけど、体内年齢は51歳と診断された。だから新しい嫁さんを見つけられたしね」(猪瀬氏)
 招致活動中の13年、妻が突然の悪性脳腫瘍で亡くなり、今年5月に婚約した。猪瀬氏は東京五輪後、政府は「高齢化社会の克服」を掲げるべきだとして、こう力説する。
「大阪府が立候補している25年万博の開催地が11月に決まる。高齢化社会をテーマにやれば、イノベーションになっていくはずなのです。そして東京一極集中に対して大阪が副首都だという希望が持てる可能性がある。本当は大きなビジョンを出すのが政権のやるべきことだけれど、安倍政権からは聞こえてこない」
 厚生労働省は「25年度には介護職員が約34万人不足する」という推計を発表。安倍政権は「移民政策は取らない」とする一方、介護などに外国人の活用を促す制度変更を打ち出している。
「安倍政権は技能実習や留学という枠組みのまま外国人を受け入れているけれど、移民が入ってくることを前提にしたビジョンを作って、もっと明確に位置づけないと」(猪瀬氏)

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