お知らせ
編集長後記
「宇宙の始まりがどうだったかが分かっても、何の役にも立たないけれども、人類の共通の知的財産をちょっぴり増やした、と言えるのです」
世界初のニュートリノの観測で2002年にノーベル物理学賞に選ばれた小柴昌俊さんは、その3年後のインタビューで、基礎科学の魅力をこう話してくれた。科学とかノーベル賞とかいうと、とっつきにくいと構えてしまうが、柔和な表情と分かりやすい言葉でその敷居を下げてくれた。
当時から、実用を目的とする研究が重用される社会情勢を嘆いていた。「役に立たないかもしれない」研究に取り組む多くの若者を励まし、育てた名伯楽は94歳で旅立った。
(坂巻士朗)